5年後 ページ31
＿＿＿＿＿5年後。
ペトラ「兵長！右から15m級の奇行種が凄い速度で接近しています！」
最高速度の馬で駆けながらペトラの言う方向を見てみれば、確かに中々の大きさの奇行種が私達に向かって走ってきていた。
私は左胸のポケットにそっと手を触れ、その固さを確認してから刃を引き抜く。金属の擦れる嫌な音が耳を貫いた。
「＿5分で戻ります」
体勢を崩さぬように馬の上に立ち、いつでも立体起動に移れるように準備をしていると、私の後ろにいる部下達が目を見開いた。
エルド「平地での立体起動戦な上、ひとりで15m級なんてさすがに無茶です！」
オルオ「そうですよ！Aさん、落ち着いてくださいって！」
グンタ「俺も手を貸します！」
ペトラ「まずは兵長の指示を仰ぎましょう！」
私は後ろを向いて、心配してくれてる班員の顔を一人ずつ見回した。
＿＿不安がっている顔。
「…エルド、今までの私の実績を忘れた？オルオ、落ち着くのは貴方の方。グンタ、遅れを取る人は私ひとりで十分。
…でもペトラの言うとおり、まずは兵士長さんの意見を聞こうか」
斜め前にいるリヴァイさんと目が合う。皆と違ってその目の奥に、私に対しての心配や不安はない。
ただ私の事を＿＿信頼する目。
リヴァイ「…5分じゃ遅い。3分で片付けろ」
部下達が息を飲む。私は「了解」と呟いてから馬を軽く蹴り、空中に舞うと共にアンカーを出した。
・
エルヴィン「…今回も2人揃って素晴らしい…と言うよりは異常な数の討伐数だな」
エルヴィンさんは微笑みを湛えながら、私が書き上げた今回の壁外調査のリヴァイ班の報告書から顔をあげた。
「今回は少ない方ですよ」
エルヴィン「はは、さすがだな。そう言えば前に、リヴァイの討伐数とAの討伐補佐数が全く同じだったこともあったな＿＿さすがは”右腕”と言ったところか」
「…ありがとうございます」
どんな顔をすれば良いのか分からず、微笑みなのか何なのかわからない表情で言ってしまった上、語尾がはてな気味になってしまった。そんな私を見て、エルヴィンさんは軽く笑う。
エルヴィン「今回も、世間では”人類最強”と”兵士の女神”のタッグが話題になっているそうだぞ」
5年の時を経て、
私は”地下街の悪魔”から”兵士の女神”、何て言うように呼ばれるようになった。
おまけに、兵団内でのあだ名は”兵長の右腕”だ。
誰も、私が”地下街の悪魔”だなんて事を覚えてない。
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作者名：みみみみみ | 作成日時：2022年9月29日 19時
