最善策 ページ1
私の手を引いて数歩前を歩くリヴァイさんの背中は凄く辛そうに見えた。
私が皆に気を遣わせてしまったことは分かってる。でも私にどんな過去があろうが、私のやった罪が消えるわけではない。本当に私がこの事情を話すだけで、皆は私を受け入れてくれるのだろうか。…デノンさんは、許してくれるのだろうか。
黙ったまま部屋に着いて、中に入ると、リヴァイさんは私の頭を撫でようとして_直前で躊躇うようにその手を止めた。
…やっぱり、気を遣ってる。
私は彼の手を迎えに行って、さっき繋いでくれていた時のように指を絡ませて握りしめた。
「…気を遣わないでください」
そう言うと、リヴァイさんは私の手を離して今度こそ頭を撫でた。
その触れ方は、まるですごく大切なものを触るみたいに、ひどく優しかった。
リヴァイ「気を遣ってるのはお前の方だろうが…。ガキが大人に気ぃ遣うんじゃねぇ」
何回か私の髪を撫でてから、今度は私の頬に優しく触れる。
リヴァイ「…本当に、怖くないのか」
「…リヴァイさんだけは、怖くないです」
そんな優しい触れ方をされたら、怖がれるわけなんてない。
リヴァイ「…身体の傷や怪我はないのか」
「ありますが…ここに来たときハンジさんが治療してくれたおかげでだいぶよくなりました」
リヴァイ「…そうか」
リヴァイさんの伏せられた瞳は何を考えているのか、私にはまだ分からなかったが、ただ相変わらず、ひどく私の事を想い、心配してくれているのは痛いほど伝わった。
リヴァイ「…疲れてるだろ、寝た方がいい」
リヴァイさんは私の顔をじっと見てから、ふと目をそらして言った。
その瞳に、若干の迷いの色が見てとれた。
きっとリヴァイさん達も、何が最善策なのか…分かっていないのだろうと思う。
リヴァイさんは特に…ひどく優しいから、きっと私の気持ちまで汲もうとしている。
「…ひとつだけ、我が儘言ってもいいですか」
私があんな汚い人間で、汚い事をされてきたと知ってもこんなに優しく触れてくれるリヴァイさんに、少しだけ甘えたくなる。
「…寝るまで、側にいてください」
本当は、話してる時も話し終わった時も怖くて仕方がなかった。
突き放されたらどうしよう、幻滅されてしまったらどうしよう…と。
でもリヴァイさんは、相変わらず私の気持ちを見抜くことが得意なようだ。
リヴァイ「…ガキは我が儘言うもんだろ、いつでも甘えたい時に甘えればいい」
リヴァイさんは再び私の手を握り締めた。
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作者名:みみみみみ | 作成日時:2022年9月29日 19時