どこぞの怪盗、毎晩来るけどなんなんですか？

◆ ページ35

「…その反応も、貴方らしいです。」

『はぁ…？』



何だコイツ、知ったような口ぶりだな。
私とよく喋ってたみたいな。…いや、結構喋ってるからこうはなるか。



「…俺の事、覚えてないか？」

『…はい？』


敬語が消えたコイツは、初めて見たかもしれない。
…そして、「覚えているか？」と来た。

さて、どうしよう。












全ッッッッッ然コイツの事知らねえんだけど。

え？どうしよう記憶力のカスさが今仇(あだ)となったわ。

このムカつくほど良い顔面を見て思い出す野郎……


……あ。




『工藤！？お前もしかして工藤！？』


「…へっ？」


『お前蘭という嫁…いや、妻を置いて何怪盗なんかやってんの！？バカなの！？』



そういえばコイツの顔はどこか見た顔だったのを覚えている。

顔面をガシッと掴んで近くに寄せても、やっぱ工藤。ちゃんと工藤。しっかり工藤。



「あ…っと、あの、」

『お前事件だとかほっぽいて怪盗やってたのか？回答によっちゃ成敗してやんぞ』

「や、ちょっと」

『事件解決じゃなく怪盗に勤しんでるってお前…親泣くぞ』

「ちょっと待て！！俺は東の高校生探偵じゃねえ！」


『………はい？』



…ここまでソックリなのに別人？
………え？？



「…というか、近い…」

『え？あっすんません』



パッと手を離して後ずさる。

ブスがイケメンに近づきすぎて絵面が大変な事になってたわ。

シルクハットをクッと下げたキッドの顔はよく見えないが、顔を逸らされていることはわかった。

…もしかして、キレてる？ブスが近づくんじゃねえって怒ってる？



『あのー…キッド？』

「…何でしょうか」

『…何故お顔をお逸らしになられているのでしょうか…？？』

「…気の所為ですよ」



嘘だ！！


有名鬱アニメの名ゼリフを心の中で叫ぶとは思ってなかったわ。

顔絶対合わせる気無いじゃんこの人。



『…なー、顔近づけた事謝るからさー』



ぐいっと引くと、驚くほど簡単にこっち向かせれた。
…もしかして非力なのかコイツ。



『怒ってるならそう言え…って…』


「…あ」



『…赤』




キッドの顔が、真っ赤、だった。

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