22 境内にて。3 ページ22
…
冷や汗が一気に吹き出す。
頭が真っ白だ。どうしようしか頭に浮かんでこなくて、どうかどうか小さな動物でありますようにと願いながらも、足音がそれではないと明確に告げている。
ガクガク震える情けない足をどうにか立たせて場所を移そうとするけど、『化け物』なんて昔の声がチラついてどうにも体が動かない。
どうしよ、どうしよう。真希ちゃん、パンダくん──
「──ツナ! おかか、明太子!」
「い、狗巻くん!」
ちょっと怒った声でそう言う狗巻くんの姿があった。手には私のスマホもあるし、予備の呪符も見つけてくれたようだった。
「ごめんなさい……私迷子になっちゃった……」
「お、おかか。ツナマヨ……」
今度は今度で、安心したらぶわわと涙がこぼれ始めた。
この日のために勉強した、折角のお化粧がとれちゃうのに……なんて頭では冷静に思うけれど、それよりもまた一般の人に怪我させるんじゃないかと気が気じゃなかった。
私がぼろぼろ泣き始めたので、狗巻くんが焦った顔をして「すじこ? いくら、こんぶ……」なんて言っているけど、いつもの様なジェスチャーがないからちょっとよく分からない。
「ツナ」
とりあえず、というようにさっきまで私が座っていたところをトントンと軽く叩く。座ろうってことかな。
大人しく座ると、狗巻くんも座る。それから私がなくしてたスマホと、呪符をくれる。
「あり、がと……、ごめんね狗巻くん」
「おかか」
私が落ち着いた頃を見計らって、狗巻くんがまた声をかけてくれる。
「ツナマヨ?」
狗巻くんは、小指と親指だけを立てた右手を、耳元で振る。それから自分をさして「おかか」と言った。
電話、狗巻くんはできないからやってくれってことかな。
「電話、そうだよね……」
「しゃけ」
真希ちゃんに怒られそうだな……なんて思いながらスマホをタップして真希ちゃんに電話をかける。
『A?! 今どこにいるんだ!』
もしもし、も無くキィンと音が割れるくらいの大声で尋ねられ、
「スマホ、落としちゃって……いま、狗巻くんと合流できたの。け、境内にいる」 怒られるなこれは、と確信しつつ恐る恐る言う。
『……わかった。絶対そこから動くなよ』
真希ちゃんの怒ってる声がする。いつもよりずっとずっと声が低い。
うう、なんてまた半泣きになっていると、狗巻くんがまた気にかけてくれて申し訳なくなった。
狗巻くんが何か決意したように拳を握ったのは、彼しか知らない。
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みみず2(プロフ) - なおこちらのコメントは後日削除させていただきますので、必要であればお控えくださいますようお願いしますm(_ _)m (2022年4月26日 6時) (レス) id: c96996a763 (このIDを非表示/違反報告)
みさにゃん(プロフ) - 途中でも読みたいので教えてください❗ (2022年4月26日 0時) (レス) id: 261ab17a8b (このIDを非表示/違反報告)
みさにゃん(プロフ) - 大丈夫です。 (2022年4月26日 0時) (レス) id: 261ab17a8b (このIDを非表示/違反報告)
みみず2(プロフ) - みさにゃんさん» コメントありがとうございます。2作目の方が作品途中で更新停止してしまっていますがよろしいでしょうか? (2022年4月25日 2時) (レス) id: c96996a763 (このIDを非表示/違反報告)
みさにゃん(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます❗ パスワードを教えていただきたいです。 (2022年4月24日 18時) (レス) @page48 id: 261ab17a8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みみず2 | 作成日時:2021年2月23日 21時