私の手の中の ページ32
＊
ピチャリと注射器から落ちた液体。
真夜中のラボで、Aは小さな光を灯していた。
ドアの小窓だけじゃ、外からはこの程度の灯なんてわからない。
ましてや誰がいるのかも。
Aこそが、『特権』を使う常習犯であった。
博士の助手だから、ということで公式に許可を貰う時もあれば、こうやって無許可でこっそりと実験を行う時もある。
まぁ八割方後者なのだが。
「......よし」
ペトリ皿に置かれた白い粉に注射器の液体を慎重に注ぎ、軽く混ぜて固める。
そして机の下からゲージを取り出すと、中には興奮状態のネズミが口を開けていた。
Aの姿を見ると、檻を揺らして飛び掛かろうとしてくる。
「おっと、ごめんごめん。
ちょっと待っててね」
このネズミは昼間、ある研究員から処分を任されたものだった。
人間の子供たちに投与する新たな薬の最終調整の為に、それをこの子に投与した。
結果は上々。
興奮状態を起こさせ、身体能力を抜群に上げるものとして実験は成功していた。
だがその研究員はそのリスクに気づいていない。
高い身体能力を得る代わりに、体中に激痛が走ることを。
ネズミは決して興奮状態だけで暴れているわけではなく、耐えきれない痛みを味わっているのだろう。
Aは生肉で先程作った白い塊を包み込む。
ピンセットでそれをネズミの空いた口へ置いた。
ネズミは狂ったようにその生肉を貪り食う。
するとネズミは数十秒後、寝息を立てて寝転んでしまった。
「......OK。これでよし」
傍らに置いたバインダーをめくっていく。
ノーマンやヴィンセントの部屋へ持っていく時とはうって変わって、かなりのプリントが挟み込まれていた。
他の研究員の実験内容。
実験体の情報。
そしてその1番上に、今の実験結果を挟む。
これで全て揃った。証明もできる。
さらにめくり、Aはある3枚で止まった。
実験体の子供のページだ。
『ちょっと空きができちゃって。
頼んでもいい？』
.
「......イエス、『━━━』」
ロウソクを吹き消すと、ラボは一気に静かになる。
音を立てぬよう、Aは部屋をあとにした。
どうかその手を離さないで(1)→←こうして少女は夢を見るか(4)
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MiUmIu(プロフ) - みしょやす。さん» コメントありがとうございます！『皆様が驚くようなラストを』と思っていたので、そう思えて頂けて光栄です！もし次作が出来上がりましたら、そちらもよろしくお願いします！ご愛読ありがとうございました！ (2019年6月29日 13時) (
レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
みしょやす。(プロフ) - はじめまして！ 完結おめでとうございます、最後はああやって終わるのか…と朝から衝撃にあいました笑笑 毎回毎回楽しみにしていたのでそれが終わっちゃったのは寂しいですが、ズルズルやることなくスパッとしていていいなとも思いました！（何様だ）本当にお疲れ様です (2019年6月29日 8時) (レス) id: 5dafdcb4c2 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - uaさん» コメントありがとうございます！ワンダーランドから読まれているのですね！？本当にありがとうございます！！すごく嬉しいです！次回作もぜひよろしくお願いします！ (2019年6月28日 22時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
ua(プロフ) - 完結おめでとうございます！そしてお疲れます！ワンダーランドからMiUmIuさんの作品を読ませていただきだいてます。主人公の設定とかストーリーが好きすぎてどうしようもないです笑新作が出来たらまた読ませていただきます！本当にお疲れ様でした！ (2019年6月28日 20時) (レス) id: bfc46cf277 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - rin:)さん» わぁー！コメントありがとうございます！有難いお言葉.......光栄です！！ (2019年6月24日 19時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：MiUmIu | 作成日時：2019年6月7日 6時
