嘘つきと嘘吐き ページ24
＊
その日からいくつか経った、午後9時。
施設撤退命令が出されるまであと1時間となったところで、ある一室に研究員全員が集められていた。
その部屋は会議室であり、特に重要な事態がない限りそこに全員が集められることは無かった。
「では、全員揃ったので始める」
スミー博士の横で立つ男が今日の進行役。
博士は薄く微笑みながら、対角線上に座るAを盗み見ていた。
「ではまず────」
淡々とした会議が続く。
これはいつもなら上位研究員の中で行われること。それと大した変わりはない。
だったら早く寝かせて欲しい。
Aは1つあくびをこぼした。
「そして、新プロジェクトについて」
「フルスコアの22194を」
カタン
とペンが落ちた。
一斉に注目を浴びてしまったAは特に気にすることなくそれを拾う。
博士はまだ、笑っていた。
「彼は毎日のテストでフルスコアを連発しており、非常に優秀な実験体であることをこの数ヶ月で確認した。
さらに、毎日の『 』でもうそろそろ効果が見え始める頃だとも推測している。
そうだよな？A」
「......勿論。
準備は上々。もうしばらくすれば」
拾い上げたペンでメモをとる。
彼────ノーマンの実験が決まった。
「いいだろう。実験に向けて気を抜くなよA」
「失敗は許されないぞ」
「お前のようなガキに出来るのか？」
口々にヤジを飛ばす大人達。
それはAが子供だから。ただそれだけ。
本来ならば食用児として、実験体としてここにいるはずの『子供』であるから。
それが博士の余計な気遣いで、こんなにいい『実験体』に目の前で好き勝手やられては、彼らは内心穏やかではなかった。
「ご心配なく皆さん。
私が必ず、世紀の大実験をやってみせましょう」
Aのその『言葉』に、博士は満足気に頷いた。
会議が終わった。研究員達が部屋を出ていく。
最後にAが出ようと立ち上がると、博士がドアの前に立っていた。
「随分と自信満々だねA」
『仲直りはできたのかい？』
そう続けた博士は、やはり笑っていた。
この人はいつも笑顔で、何を考えているのか読めない。
「......まぁ。
関係も修復したし、大丈夫」
「そう。それは良かった。
ちゃんと『言葉』には気を付けるんだよ？」
そう言うと博士は踵を返して歩いていく。
暗い部屋には、A1人が残されていた。
僕らはみんな壊したい(1)→←先に気づくのはどちらであるか(2)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「約束のネバーランド」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
MiUmIu(プロフ) - みしょやす。さん» コメントありがとうございます！『皆様が驚くようなラストを』と思っていたので、そう思えて頂けて光栄です！もし次作が出来上がりましたら、そちらもよろしくお願いします！ご愛読ありがとうございました！ (2019年6月29日 13時) (
レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
みしょやす。(プロフ) - はじめまして！ 完結おめでとうございます、最後はああやって終わるのか…と朝から衝撃にあいました笑笑 毎回毎回楽しみにしていたのでそれが終わっちゃったのは寂しいですが、ズルズルやることなくスパッとしていていいなとも思いました！（何様だ）本当にお疲れ様です (2019年6月29日 8時) (レス) id: 5dafdcb4c2 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - uaさん» コメントありがとうございます！ワンダーランドから読まれているのですね！？本当にありがとうございます！！すごく嬉しいです！次回作もぜひよろしくお願いします！ (2019年6月28日 22時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
ua(プロフ) - 完結おめでとうございます！そしてお疲れます！ワンダーランドからMiUmIuさんの作品を読ませていただきだいてます。主人公の設定とかストーリーが好きすぎてどうしようもないです笑新作が出来たらまた読ませていただきます！本当にお疲れ様でした！ (2019年6月28日 20時) (レス) id: bfc46cf277 (このIDを非表示/違反報告)
MiUmIu(プロフ) - rin:)さん» わぁー！コメントありがとうございます！有難いお言葉.......光栄です！！ (2019年6月24日 19時) (レス) id: c6740f863a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：MiUmIu | 作成日時：2019年6月7日 6時
