第91話 後日談終 ページ42
あ「…な、ん……」
驚き過ぎて声が掠れる。
紡ぐ最中にもパキパキと音を立て、徐々に亀裂が広がっていくのがわかった。
………こいつは刀だ、刀に亀裂が入るのは……
鶴「俺を、呼んでくれ」
予想もしないスピードで彼方此方に亀裂が走っている。あまりの予想外の事態に私は内心慌てていた。
こいつは仮にもたとえクソみたいな野郎でも付喪神であり、彼女の刀だ。
そして何より、刀を扱う者として……
刀を折る事は、死と同じ事。
刀は己が命だ…………此処で、折らせるわけにはいかない。
あ「つ、鶴丸国永様、」
ガンッと壁を殴りつけたクソ太刀。手にも亀裂が入っており、折れるのも時間の問題だ。
鶴「違うんだ、そうじゃ、ない……っ」
鶴丸国永以外何と呼べと言うんだこいつ。
というツッコミを入れる余裕がないのが残念だ。どうすれば、この亀裂の進行を止めることができるんだろうか。
すると白太刀は、ふと身を離したかと思えば、色を無くした双眸を虚空へと向け哀愁含む微笑を湛えた。
鶴「……土の中に、還りたい」
あ「……何を言って、」
鶴「もういい、もう、いいんだ……俺なんか居なくても、三日月達がいる」
______パキパキッ
鶴「……俺も………輪に入りたかった」
ぽつりと聞こえるか否かのか細い声で紡がれた一言が、私の胸に見えない何かがぐさりと刺さった気がした。
もしかして、寂しかったのでは無いのだろうか。
例え短刀達に慕われている存在であったとしても、何処か孤独を、感じて居たのでは無いだろうか。
こいつが私に突っかかってきていたのか分かった気がする。刀の皆を守る為は勿論……寂しさを紛らわせる為だったのでは、ないだろうか。
………私は今まで、こいつに悪い事を…
鶴「……もう、…………っっ!!?」
あ「ごめんなさい」
私は壊れゆく相手をぎゅっと抱きしめた。
余計に亀裂の進行が早くなるのでは、と……そんな考える余裕なんてない。
あ「……ごめんね、鶴丸」
鶴「………っ、き、み……」
あ「一人にさせていた……、ごめんね……」
大「………そこまでだ」
白太刀をぎゅっと抱きしめていれば、突然現れた暗い影と聞き覚えのある低い声に驚く間も無く襟を掴まれ引き剥がされた。
……え、え??
あ「お、大倶利伽羅、さん?」
大「……」
殺すような眼差しで鶴丸を一瞥した大倶利伽羅は、無言で私を抱き上げ稽古場を後にした。
あのクソ太刀がどうなったのか、私も彼もわからない。
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十六夜 - えぇ、鶴丸落ちになりそうなんですが(汗)わたしは、三日月推しです!!! (2018年5月17日 3時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 続きは、まだでしょうか?早く続きが読みたいです!! (2018年3月30日 11時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - うぉぉぉ!!!すごく面白いです!!!今後の展開も楽しみです! (2018年3月6日 22時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
白紫乃(プロフ) - とっても好きなお話です!更新お待ちしております! (2018年2月21日 20時) (レス) id: 43803e668e (このIDを非表示/違反報告)
霜月 - 鶴丸は、夢主が好きなんですね。でも、私としては三日月落ちがいいです!!三日月、大好きです! (2018年1月14日 15時) (レス) id: 51d1ba9355 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミコ | 作成日時:2017年8月28日 12時