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「__い、」
「____おい、A」
誰かが、私の身体を揺さぶる。
目を開けば、すぐ側に中堂先生の姿があった。
「…うなされてたぞ」
先生は軽く息をつき、ベッドの傍らに置いてある丸椅子に再び腰掛ける。
気づけば入院してから5日が経過し、もう明後日には退院だというのに、中堂先生は夕方頃になると、必ずお見舞いに来てくれる。
しかし、何をする訳でもなく先生は解体新書を読みふける。
今日もまた、それの繰り返しだ。
自分から話はしないが、私がラボの事を聞けば、ぽつりぽつりと一日の出来事を話してくれる。
"今日はこんな遺体を解剖した"とか
"お前がいないせいで俺が三澄班のサポートに回された"とか
"俺だけが神倉さんに怒られた"とか
それを聞くのが、少し楽しみだったりする。
「…大丈夫か」
「はい」
私はまた目を瞑る。
お母さんがいなくなった時の夢を何度も見る。最近は特に。
学校から帰って、第1発見者となった私は、警察が来るまで部屋の隅でずっと縮こまっていた。
全身が震えて恐怖心が支配していた感覚を今でも鮮明に覚えている。
私の不安定な心をかき消すように、先生に話しかけた。
「…毎日顔出してくれるなんて優しいですね、先生」
「じゃないと三澄達がうるさいだけだ」
本心なのか、素直じゃないのか。
相変わらずの返答に、少し笑みがこぼれる。
病室のカーテンが風に揺れ、その隙間から夕日のオレンジが部屋に入りこみ温かく染め上げるのだった。
…そんな、長いような短いような入院生活は幕を閉じUDIに復帰して一週間が過ぎた頃、また事件は起こる。
「A!A!起きて!」
朝から大声で叩き起こされたと思ったら
何故か東海林さんが同じベッドにいる。
「…え、東海林さんが何故ここに…?っていうかここどこ…?」
上半身を起こし、辺りを見回すとそこは見知らぬホテルの一室だった。
そしてダブルベッドに東海林さんと一緒に寝ていたという事実。
何故こうなったのか、記憶を探るが
頭痛がそれを邪魔する。
「…東海林さん、私達一体何が…」
「…こっちが聞きたいわよ、だってAの隣……」
隣…?と、東海林さんの震える指先の行方を恐る恐る辿ると、男が硬直して亡くなっている。
「…っ、嘘でしょ」
思わず東海林さんの腕にしがみつく。
フラフラの足でなんとかベッドから逃げ出すと東海林さんが「今すぐ来て!」と三澄先生を呼んだ。
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青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時