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「え、その捜索資料どうしたんですか」
先生と、資料を交互に見ると先生は
「封筒に入っていた」と淡々と説明する。
なんと毛利さんは当時の資料まで、用意してくれたらしい。
私はそれを恐る恐る受け取り、ごくりと唾を飲む。
中には事件の内容が、事細かく記されていた。
母の死亡推定時刻は午後19時頃。
自宅のリビングで殺害されているのを、娘である私が発見した。
凶器とされたステンレス包丁からは、父の指紋が検出された。
父は町医者の内科医で、事件当時は1人職場に残り、資料整理をしていたと主張しているが
証明できる人間がおらず、虚偽と判断された。
それを読んでいく内に、段々と父の姿が
脳裏に浮かぶ。町の小さな内科医で、白衣を着た父の姿が。
「俺が気になったのはここだ」
先生の声で、ハッと意識が現実に戻ってきた。
先生の指差す方に、目を向けると
殺害動機は、夫婦仲が悪く口論の末衝動的に
殺害したものと思われる、と書いてあった。
よくある夫婦喧嘩が最悪の事態を招いたかのように書いてあるが、先日父の遺品から出てきた、家族写真や手紙からは到底夫婦仲が悪いようには思えない。
「捜索資料には衝動的に、と書いてある。だが
傷口の形状から見て、刃物は下から上方向に刺している。故意に力を加えないと、この形にはならない」
先生は傷口のホルマリン溶液を持ち上げ、私に見せる。
「明らかな殺意の表れですね」
先生は私の言葉に頷きながら「それに、」と説明を加える。
「一回で腹部の急所に刃物が達している。衝動的に殺そうと思った人間が、一発で確実に仕留めるなんてありえると思うか?」
「やっぱり、この捜索資料おかしいですね」
私が目を伏せながら言うと、捜索資料の中から
ひらりと1枚のメモ書きがテーブルに落ちた。
"陽名大の解剖医は、元日彰医大の解剖医でした。Aさんのお父さんの内科院に、解剖医の妻の通院歴が見つかりました。
しかし、その妻の病状が悪化し、医大の方へ搬送され緊急手術を行いましたが、亡くなったそうです"
毛利さんの手書きで書かれたであろう
このメモを見て、私は絶句した。
母を殺す動機が、あの解剖医にあったなんて。
「解剖医自身が、犯人だったら証拠を隠して
鑑定書も偽造できる…」
「警察はその鑑定書に沿って捜査する。
…危うく完全犯罪の完成だったな」
私はもう一度、鑑定書に目を通す。
「この凶器も、違うって事ですね」
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青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時