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ラボに戻った私達は、備え付けのシャワーを浴びた後、父の解剖結果の資料まとめに追われていた。
それがやっと終わった頃には、もう定時間近で
ラボ内は次々と帰宅していく人達の姿があった。
「お疲れ様です」
オフィスに残っていたのは、私1人だと思っていたため、突然声をかけられて肩がビクッと震えた。
「あ、久部くん。お疲れ様。まだ残ってたんだ」
「東海林さんが、肺の水を調べたらやっぱり細菌の反応が出たそうです。あとこれ、毛利さんが遺留品の中から見つけたそうです」
久部くんは、一つの封筒を私のデスクに置いた。
花柄の可愛らしい封筒の封を切ると、一枚の写真と手紙が出てきた。
"Aへ"と書かれており、父が私宛に書いたものだった。
その文面に、目を通す。
"僕は今、イギリスの田舎町からこの手紙を書いています。
僕はこの田舎で、農業を手伝いながら生活しています。この逃亡生活の中で、妻とAの事を忘れたことは一度もありません。
信じてくれないだろうけど、僕は妻を殺してなどいません。
Aには、これまで沢山迷惑をかけて本当に申し訳ない。16歳で、両親がいなくなるなんて
大変な思いをさせて、申し訳ない。
そして、この地で生活する内に周りの人に偽名を使って、嘘をつきながら過ごす事に、罪悪感を感じ、この地を離れようと決意しました。
Aは、写真の場所を覚えていますか?
緑が鮮やかで、川もとても綺麗な場所。
家族旅行で行った、思い出の場所。
僕はもう一度そこへ行きたい"
同封されていた写真には、父が溺れたと推測される川の上流付近で、家族3人で笑っているものだった。
「だからお父さんは、あの場所へ行ったんだ。
人目に触れる危険もあるかもしれないのに」
そして、運悪く足を滑らせ川に溺れた。
パズルのピースが全てはまったかのように、
父の死の真相が分かった。
「問題は、誰が鑑定結果を偽造し、遺体を火葬場まで運んだかですね」
久部くんの言葉に、数回頷きながら私の考えを話した。
「鑑定書を偽造するなんて、一般の人には無理がある。つまり、私達と同じ法医学者かあるいは警察関係者の可能性が高いと思う」
「法医学者は全国に200人、警察関係者は20万人もいますけど…」
久部くんが苦笑いを浮かべる姿を横目に
「そうなんだよ…その中から1人を探し出すなんて」とデスクに突っ伏す。
広大な砂漠の中で、一粒の砂を見つけるようなものだ。
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青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時