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私はその声に振り返る。
「先生もそう望んでいると?
先生は、原因を究明して鈴木さんの人生に区切りをつけさせたいと、そう思ってるんだとばかり…
…でも先生にとっての答えは、犯人を殺すことだったんですね」
「お前はどうなんだ?母親を奪われ、家族の記憶さえも無くなったお前は、殺さずにいられるか?分からないから立ち止まってるんだろ」
先生に全てを見透かされて、思わず目をそらす。
「…そうですね。でもいつも口悪くて、態度も悪くて、無愛想ででも私が泣いてたら、抱きしめてくれて、ソファで寝てたらそっとジャケットをかけてくれるそんな優しい人に
人を殺して欲しくない」
私がそんなことを言っても、
説得力に欠けるかもしれない。
どの口が言うんだと思われるかもしれない。
…でも、それでも
私は先生の両手を固く包み込み、
真っ直ぐに先生だけを見つめる。
「その時は、
必ず私が先生を引き止めます…絶対に」
止むことを知らない雪が、
先生と私の手に、落ちては消えを繰り返す。
2月の凍てつく風に流されるように目線をずらすと、騒ぐ傘の群衆の中、犯人の女性に馬乗りになりナイフを振りかざす鈴木さんの姿が見えた。
その瞬間私は、一心に鈴木さんの元へと足を動かす。今度は前に前にと、雪の中を切るようにひた走る。
「…鈴木さん!止めろ!」
「鈴木さん!」
三澄先生と久部くんが必死に
鈴木さんを止めようとしていた中
2人を通り越して、私は犯人の女性の上に
覆い被さり、降り落ちるナイフを背中で受け止めた。
激しい痛みが、全身を駆け巡る。
その刹那カラン、とナイフが地面に落ち
鈴木さんは警察に連行されて行った。
「A!?しっかりして!」
三澄先生の鬼気迫る声が聞こえたが、
視界がぼやけて、その表情までは読み取れない。
次第に身体の力は抜けて、私はその場で
ぐったりと横たわる。
真っ白な雪が、赤黒く染まる様子を
ただ眺めているしか出来ない。
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青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時