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「やっぱりそうでしたか…」と、毛利さんが小さく呟く。
「警視庁内でも、13年前の逃亡犯なんじゃないかって噂になってまして。Aさんには身元確認の意味でも、UDIに遺体を持って来たんです」
私は床に崩れ落ちそうになるのを堪え、
もう一度顔を覗き込む。
ずっと探し続けた人と、こんな形で再会することになるなんて……
「間違いないです。私の父で__いや、母を殺した犯人です」
「…まぁ大方、逃亡生活も限界に達し、この世を去ったって所ですかね。身元もはっきりしましたし、解剖するまでもないでしょう」
毛利さんの発言に、私と先生は同時に毛利さんの方を見やる。
「いや、まだ死因は分かってませんし、最悪何かの事件に巻き込まれたって可能性もあるじゃないですか」
今度は毛利さんが「いやいや」と大袈裟に手を振る。
「目立った外傷は何一つ無いんですよ?現場では揉み合った形跡すら無かった。事件性もない」
「…でも……」
動揺を隠せず、呆然と立ち尽くしていると中堂先生が「おい」と私を呼ぶ。
「これ見てみろ」
先生にご遺体の鼻と口周りを指差され、焦点を当てるとあるものに気がついた。
「これ、口と鼻に微かに泡まつがあります…水死の特徴です」
「水死!?発見されたのは川もない山奥ですよ?あんな所で水死する訳ないでしょう!」
目を見開き、驚愕する毛利さんに、さらに私なりの考えを話した。
「単純な話、別の場所で殺害した後に発見を遅らせる為に移動させたとか」
「それだと他殺ですよね」
…そうだった。毛利さんは極端に他殺を嫌う人だった。今回は特に怪訝そうな顔をしている。
そんな様子を見た先生は、マスクで目元しか見えてなくても、口角が上がっているのが分かる。
「…他にも"不自然"な点がある。解剖決定だな」と、嫌味たらしい言い方をすると、今度は私に目を向ける。
「ただし、お前はこの解剖から外れろ。関わると後々面倒なことになる。神倉さん呼んでこい」
先生の面倒なこととは、自分が体験した事を言っているのだろうと理解し、私は解剖室を後にする。
所長に事情を説明し、解剖は先生と所長が行う事となった。
しかし、気が気でなく解剖室の前を
行ったり来たりしては解剖が終わるのを待つ。
先生が所長に対し、声を荒げているあたりが
大分手こずっているのだろうと伝わる。
その為時計の針は23時を過ぎていた。
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青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時