【名探偵ｺﾅﾝ】私、今日から一般人辞めます

白と黒と灰色と 1 ページ5

自宅から徒歩8分。

通りを一つ挟んだ先にあるのが、トリップしたら行きたいところランキングがあれば堂々の上位を取るであろう観光スポット。


そう、喫茶店ポアロと毛利探偵事務所だ。


思い立ったがなんとやら。

そっと中を覗いてみれば、原作通り本当にJK間で流行っているらしく、女の子で賑わっていた。

よく見れば、艶やかな金色の髪をふわりと揺らし、柔らかな笑みを浮かべる男性。

安室透がホールを忙しなく動き回っていた。


ひぇ、本物の安室さんだ……。


止まらない動悸と本物を見てしまった幸福感でポロリと涙がこぼれる。
くっと呻いてその場にしゃがみこむ。

こんなところでしゃがみこむなんて不審者極まりないことは理解してるけど、それでも立ち上がれない程の痛みが胸を襲う。


尊さという痛みはどうにかなる様なものでもないからね。仕方ないね。



『……本物だ。本物ヤバイ、カッコよすぎる、今なら死んでも良い』


そう独り言を呟きながら頭を抱えて、どれぐらいたっただろうか。

不意に背中を叩かれてハッと我に帰った。

そうだよ、こんなところでしゃがんでたら不審者だし何より邪魔じゃないか！
慌てて立ち上がりながら振り返る。


『あぁすみません、ちょっと体調が』


そこまで言って、声が出なくなった。

魚のようにぱくぱくと口を動かして、何も言えずに口を閉ざす。
その様子を見て肩を叩いた主は訝しげに口を開いた。


「そうなんだ。大丈夫？どこかで……あ、とりあえず中に入って休んだほうがいいんじゃないかな？」


そう言って屈託ない笑顔を浮かべる目の前の少年。

みんな大好き工藤新一改め、江戸川コナンだ。

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