忘却の彼方 4 ページ17
「つまり、君は昨日トリップした、と、そう言いたいわけだね?」
『間違いなくね。まぁ、トリップなんて信じれないかもしれないけどさ』
「そこじゃないよ」
私より少し先を歩いていた菖蒲の足が止まる。
勢いよく此方を振り返った彼の顔は複雑で、何か言葉を発そうとしては何も言わずに口を閉じて、を繰り返していて。
やがて意を決したかのように唇を噛むと、顔を伏せた。
「……君がこの世界に来たのは"昨日"じゃない。君がこの世界に来て、既に1年の時が経ってるんだ」
『は?』
何を言っているのか。
この世界に来て1年が経ってる?
と言うか、この、世界?
「君が"名探偵コナン"の世界に来たのは1年前。昨日なんかじゃない。僕が送り込んだんだ、間違えているわけがない」
『ま、まって。待って。色々整理させてよ』
つまり?
私は菖蒲によってこの世界に連れてこられ、既に1年間こちらで生活していた、と?
いや、そんなはずはない。
だって確かに一昨日までは普通の女子高生として東京に住んでいた。
記憶は、確かだ。
でも、言われてみたら何故かそんな気がしてきた。
記憶には無いけれど、自分の中でデジャヴのようなものを感じたのがわかる。
『じゃあ、菖蒲は神様か何かな訳?』
「そうだね、この世界で人間のフリをして暮らしてはいるけど、一応神って呼ばれる立場の存在だよ」
さっきまでの重苦しい雰囲気は何処へやら、どや顔で笑う菖蒲の顔に釣られて此方も笑みがこぼれた。
……なるほど。
『つまり、菖蒲の知るAと、私は別人な訳だね。私の記憶は確かに一昨日までは普通の高校生だったもん』
「そう、なるだろうね。器と魂は一緒でも君は別の世界線のAなんだろう。ごめんね、キチンと原因を調べたら元の世界に戻してあげるから」
そう言う菖蒲の顔を見て、んーと唸る。
『帰りたくないって言ったら怒る?』
「え?」
『私、帰りたいと思ってないよ。名探偵コナンは大好きだったし。まぁ、両親が生きてるかどうかは知りたいけど』
「……君がそう言うなら。そうするけど」
困った顔でそう言う菖蒲の手を引いて、笑った。
『よし、話もついたしポアロ行こ!』
レッツゴー!とテンションをあげつつ走り出す私。
その後ろで菖蒲が慌てたように声を漏らした。
「ま、待って!ポアロは不味いって!」
困った様に叫ぶ菖蒲の声は聞こえなかったことにして、私は菖蒲をポアロまで引っ張っていった。
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白菜(プロフ) - まいさん» もったいないお言葉感謝いたします…!更新の目処がたちましたのでまた徐々に更新していく所存でございます!まだ少しの興味がありましたら見ていただけると幸いです! (2019年12月31日 3時) (レス) id: 3f17e2e286 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - 世恋さん» ひぇ、更新してなくて誠に申し訳ない限りです。また更新再開していく予定ですのでのんびりお待ちしていただけると嬉しいです! (2019年12月31日 3時) (レス) id: 3f17e2e286 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - とても面白くて続きが気になります。また更新されるのを楽しみに待ってます(^^) (2019年8月4日 23時) (レス) id: a6e5e5f5e4 (このIDを非表示/違反報告)
世恋(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください!! (2019年5月21日 10時) (レス) id: 2be61dc08d (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - 杏さん» 閲覧有難うございます!文才なんて本当に無いんですが、皆さんにも出来るだけ雰囲気が伝えられるように頑張って書いていますので誉めてもらえて本当に嬉しいです!あむぬいばかりが転売されてる現状がとても悲しいですね… これからもこの作品を宜しくお願い致します! (2018年6月17日 23時) (レス) id: 3f17e2e286 (このIDを非表示/違反報告)
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