25話 ページ28
「それは困るな。この世界を終わらせるわけにはいかないんだ」
だがルシフェルのスペアとはいえ、サンダルフォンが一人で私たち天司に立ち向かうのは無謀だ
何よりまず、ルシフェルに勝つのはほぼ不可能だろう
サンダルフォンは彼によって作られたのだから
本物にスペアが勝るはずないのだ
……『進化』を司るルシフェルが作るものだから、そうとは言い切れないけれど
「なぜそこまでこの空を守ろうとする？高貴な天司長様のためか？」
馬鹿にしたようにサンダルフォンは笑う
それに私は穏やかな笑みを浮かべた
「空の民たちのためだよ」
「はっ、ナンセンスな答えだ。空の民たちは今まで、天司たちに何かを返したか？恩恵を受けるだけで何も返さない」
「そんなことはないよ。私たちは空の民から大切なものを返してもらっている」
私の言葉にサンダルフォンは不可解な表情を浮かべる
「いったい何を」
「君はショートケーキを知っているかい？」
「はぁ？」
唐突な問いに、彼は素っ頓狂な言葉をあげる
だが、私は気にせず続けた
「あれは空の民たちが編み出した洋菓子だ。けれど天司たちがこれを編み出すことはできない。何せ私たちには食事が必要ないからね」
「それが一体なんだって言うんだ」
「つまり私たちが彼らに恩恵を与える代わりに、私たちは彼らの知恵を貰っているのさ」
「そんなことを知った程度でなんの意味もない」
「確かに、私たちには必要のない情報かもしれない。けれど生活の幅が広がる。毎日同じことを繰り返すなんて呆気ないしつまらないだろう？人生は楽しい方がいいじゃない」
私の言葉にやはり、彼は不可解な表情を浮かべる
あの庭でしか、彼には自由がなかった
空の民たちの生きる姿など見たことがないだろう
「人々の営みは美しいよ」
喜び、怒り、哀しみ
誰かを愛し、焦がれる
私たち天司にはない感情だ
厳密にいえば感情はある
けれど所詮は作り物
だから私は、こんなにも人に焦がれている
「……理解できないな」
彼は吐き捨てるように言う
私はそれにやはり笑う
「きっと君にも、理解できる日が来るよ」
何せルシフェルが作ったのだから
そう感じないはずがないのだ
「そんな日は来ない。その前に俺がこの世界を壊す」
「君には無理だよ」
私は静かに告げた
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うさ - 続き楽しみにしてます。 (2019年6月30日 18時) (
レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
東雲ノア(プロフ) - 表現、話の内容、書き方全てがとても好みです。久し振りに素敵な作品に出会えました。陰ながら応援してます。 (2019年4月5日 12時) (レス) id: be86295bcb (このIDを非表示/違反報告)
こまこ - 最高です。 (2019年3月24日 4時) (レス) id: 95e04e1a30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちもち | 作成日時：2019年3月14日 13時
