不運大魔王の幸運な弟 にぃ

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僕たち、一年は組の演技が始まった。


黒木「皆さんは、赤ずきんと聞いて、どんな物語を思い浮かべますか？」


まずは、庄左ヱ門のなれーしょんから始まる。


黒木「きっと皆さんは、オオカミに食べられる赤ずきんを思い浮かべるでしょう。でも、この赤ずきんは、ひと味違うのです......」


庄左ヱ門が後ろに下がり、僕が舞台に立った。


A「僕は赤ずきんに恋をした。美しい髪、美しい瞳。僕は赤ずきんに、一目惚れをした」


舞台の真ん中にある大きな木に、隠れるように立った。


兵太夫「急いでおばあさんの元へ行かなくては」


舞台袖から、赤ずきん姿の兵太夫が出てきた。


A「......」


バレないように、そっと、床に花を置いた。


兵太夫「まあ.....ふふっ」


A「......」


クスリと笑い、僕が置いた花を持って、走り去っていった。


A「僕は結末を知っている。僕と赤ずきんは、絶対に結ばれない.....」


体育座りをして、聞こえるくらいの小さな声で呟いた。


A「僕に鋭い爪が無ければ....耳や尻尾、鋭い牙がなければ......僕は君を、愛せたのに.....」


悲しげに上を見あげた。


A「ああ、赤ずきん.....僕に......」





俯いて、僕は静かに舞台裏に戻った。

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