不運大魔王の幸運な弟 にぃ

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竹谷「それで、なにか悩んでる様子だったけど、どうしたんだ？」


A「悲しい演技って、難しいなぁって.....」


竹谷「悲しい演技か......」


A「出来なくはないですけど、やっぱり難しくて.....」


最後、僕も兵太夫も涙を流す演技をしなくてはいけない。

それが何より難しい。


竹谷「うーん、俺は悲しい演技をする時は、悲しい出来事を思い出してるからなぁ.....」


A「悲しい出来事.....」


ないな、悲しい出来事.....


そう考えると、なお難しい......


竹谷「それかもう、何回も練習するしかないなぁ....劇発表まで、あと二週間。Aは飲み込み良いから、大丈夫じゃないか？」


A「そう、でしょうか」


竹谷「Aなら大丈夫だよ」


A「ん.....」


ポンポンと頭を撫でられた。


A「竹谷先輩」


竹谷「うん？」


A「ありがとうございます。相談に乗ってくださって」


竹谷「相談という相談に乗れてはないけど、Aの力になれたならよかったよ」


A「お礼に、どうぞ」


懐から、五つの四つ葉のクローバーを押し花にした、栞を差し出した。


竹谷「栞？」


A「竹谷先輩に幸せが訪れるように、祈ってます」


竹谷「Aが言うと、妙に説得力あるな....ありがとう、大切に使うよ」


A「はいっ」



がんばって、劇を大成功にする。

そう思った。

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