ベランダの恋＿2

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土曜日の夕方。


ちょこちょこきていた裕太からのLINEも
すっかりなくなった。



今日は昼間に買い物に出掛けて、
さっき帰ってきたところ。


買ってきた洋服とかコスメをしまいながら、
引き出しの断捨離でもしようかなーなんて考えていた時に部屋のチャイムが鳴った。



.....裕太？



なんて、すぐに考えちゃう私。



ドアのスコープから確認すると
どうやらご出勤前の北山さん。






｢はーい｣

｢ども。これいる？｣



綺麗めなコートを羽織った北山さんは、
可愛い色の紙袋を私に渡してきた。


｢これ、って...あ！
〇〇のチョコじゃないですか。
今並ばないと買えないやつですよね？｣

｢へー、そうなんだ。
店で貰ったんだけど、
俺あんま甘いの食べないからさ。
よかったら貰って？｣

｢ほんとにいいんですか？！｣

｢ん。あげる｣


ほい、ってさっきよりも近くに渡してくるから
ありがとうございます、って受け取った。

会社の子達が言ってたけど、
有名なショコラティエのお店で
毎日行列ですぐ完売になっちゃうんだって。

そして、
1粒がめちゃくちゃ高いらしい。



｢こんなの中々食べれないですよ｣

｢そーなんだ。
んじゃまたもらったらあげるわ。
つかさ、きゅうり届かないんだけど？｣

｢きゅうり....？｣

｢へなちょこのきゅうり。｣

｢....あっ(笑)
もう収穫して食べちゃいました｣

｢えー。
なんだ〜、楽しみにしてたのに｣

｢大丈夫です！
今育ってるやつは結構立派ですから！｣

｢じゃあ、1本北山で予約しとこうかな｣


そう言って北山さんが笑うから、
私も、分かりましたって笑った。


｢じゃ、行くわ｣

｢あ、はいっ！
いってらっしゃい..ませ｣

｢んははっ、すっげ丁寧じゃん(笑)｣


コートのポケットに手を入れた北山さん。

しばらくオフの日のラフな格好の北山さんしか見てなかったから、びっしり決まってる北山さんをなんだか直視できない。


から、
もらったチョコレートの紙袋を
見てるふりをしてると

｢行ってきます。｣

っていきなり北山さんが
腰を屈めてフェードインしてきた。


ばっちり目と目が合っちゃって
思わず肩をすくめると、

｢んははっ。じゃあ、また｣

って、小さくペコッと頭を下げて
北山さんは仕事へ向かった。

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