微熱

26 ページ26

＿


電車に揺られて
40分程すると目的の駅へと到着した。


駅と言っても、構内は広い。


果たして連絡先も知らないのに
待ち合わせできるのかな。



キョロキョロしながら、
あっちに行ったりこっちに行ったり。




時計は約束の時間から15分ほど過ぎてた。





…もしかして、騙された？


それならそれでもいいんだけど。





1番目立つかな、って駅の入り口に立って
スマホを弄っているとトントンて肩を叩かれる。



振り返ると、全然知らない人で。





｢こんちは。お姉さん1人っすか？｣

｢いえ。人を待ってます｣

｢あー待ち合わせっすか？え、彼氏？｣

｢違いますけど…｣




こんな時に限って、ナンパって…。


やんわり断ってるのにだいぶしつこい。



そろそろ作り笑顔も限界、って時に
ナンパ男の視線が私から斜め後ろに向けられる。






｢なんか用？｣


ナンパ男の視線を追うと、二階堂くんで。

低い声で言いながら腕を掴むと
ぐいっと引き寄せられる。




｢……なんだ、男かよ｣


二階堂くんを見てあっさり離れていった。


助かってほっと一安心。

してると、


｢嫌ならもっとはっきり言わないと｣


二階堂くんが不機嫌にそう言う。





｢…ありがとう。助かったよ｣


一応お礼を言うと、少し笑ってくれた。






｢つか、絶対来ないと思った｣


｢だって、二階堂くんが言ったじゃない
来るまで待つって｣


｢まー、そのつもりだったけど｣


｢ほら｣




クスクスって笑ってるけど。

私今日ここに来なかったらどうなってたわけ？






｢行こ｣



パッと手を取られて進む。


ずんずん歩くから、私ちょっと早足。






｢…どこに行くの？｣


｢んー、海｣




そこから更に電車を乗り換えて、
ついた所は海沿いの有名な観光地だった。



5月だけど、
今日は真夏みたいに太陽がジリジリ肌を刺してくる。

27→←25

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す