微熱

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二階堂くんを家に送り届けて
親御さんに事情を説明してからそこを後にした。


北山先生から話は聞いていたそうで、
すみません、と何度も頭を下げられた。


話をしている間、
二階堂くんはずっと下を向いたままで。








住宅街から大通りへ出るタイミングで
電話が鳴った。


相手は北山先生から。







『もう家着いた？』


｢まだです。
さっき二階堂くんと別れたところで｣


『そっか。
急に頼んじゃって本当にごめんな。
ちゃんとタクシー使ってる？』


｢今大通り出たんでこれからタクシー拾います。
北山先生こそ大丈夫でしたか？｣


『ん。こっちは大丈夫。
じゃあ、
先生がタクシー拾うまで話してよっか』



ふふふって、
笑ってくれる北山先生にほっとする。



さっき、いきなり二階堂くんに抱きしめられて
私は結構パニックになっていたから。



どうして……？



ふざけていつもみたいに
ケラケラ笑ってくれる方がまだ良かった。


離れた時一瞬目が合った二階堂くんの顔は
切なそうで苦しそうでまだ頭の中にリアルに残っている。







『………A？』


｢……あ、すみません。｣




電話中だったのにぼーっとしちゃった。


ていうか、今、“A”って……。







『どうかした？』


｢いえ、あの、タクシー来るかなって…｣


『今どこ？電話して呼ぼっか？』


｢大丈夫です、自分でしますから｣




そう言うと丁度
遠目にタクシーが近付いて来るのが分かった。



｢あ、来ました。止めますね｣


『はいよ。家着いたらまた連絡して』


｢分かりました。ありがとうございます｣




北山先生との電話を切って、
停車したタクシーに乗り込んだ。

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