微熱

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二階堂くんに家の場所を誘導してもらって、
降ろしてもらった。


｢…本当にここ？｣


降ろしてもらったのは、広い公園の真ん前で。


｢正確には、この反対側｣

｢じゃあ早く帰ろう｣


家の前まで行ってもらえば良かったのに。

二階堂くん的に気を使ってくれたのかな。


公園を突っ切って帰るみたいで、
足を進める二階堂くんに着いていく。





｢どうしてあのお店でバイトしてたの？｣




ぽつぽつ進む
二階堂くんの後ろ姿に話しかける。






｢知ってる先輩がいたから｣

｢そうだけど、
バレたらまずいって思わなかったの？｣

｢…笑わない？｣

｢うん｣


足を止めて振り返る二階堂くん。



｢俺、ガキだから。
早く大人になりたくて、
先輩にダメって言われたけど無理やり頼んだ｣



先輩に頼まれて断れなかったんじゃなくて、
逆なのね。


早く大人になりたいって
思春期特有のその気持ち、私にもあったから少し分かる気がするな。


誰にも大人に憧れる時ってあるよね。



｢私もそういう時期あった気がする。
でもね、子供のままでいられるうちは
子供でいた方がいいよ｣


｢それが俺は嫌だ。早く大人になりたい｣



いつになく真剣な顔で
きっぱり言い切る二階堂くんがまっすぐ私を見つめてくるから思わず目を逸らしてしまった。






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先生と初めて会ったのは、
高校に入学したばかりの頃。




元々頭痛持ちの俺は、その日も頭が痛くて。

おまけに夜更かししたおかげで寝不足だったから、テキトーに行って寝れたらいいな、なんて呑気な考えで保健室のドアを叩いた。




きっと入学式でも先生の紹介はあったんだろうけど、ほぼ寝てたから先生の顔を見るのも声を聞くのも初めてだった。






…綺麗だと思った。




色白で、地毛なのかな。

光に当たると少しだけ茶色い長い髪。


同年代のクラスメイトにはない、
年上独特の落ち着きさや所作から滲み出る品の良さ。




先生の纏うその空気に、俺は惹かれたんだ。

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