◇３０「焦凍君と怪我」 ページ31
「…怪我してんのか」
「え？け、怪我というか…」
「…悪ぃ。今は応急処置しか出来ねぇが…」
焦凍君は自分が着ていた服の破ける部分を破り、それで私の足をキツく縛った。
「…学校戻ったら保健室行け」
「……え、あ…ありがとう…」
驚きのあまり演技をするのを忘れて曖昧な返事をしてしまった。
…私、焦凍君にここまでされるほど好感度上げた記憶ないんだけどな。
「…しょ、焦凍君！急いで皆のところに戻ろう！」
「あぁ、わかってる」
「でも…私、怪我のせいで思うように走れないから焦凍君は先に行ってて欲しいの」
「…あんたはどうするんだ」
「私には“個性”があるから平気。焦凍君だけでも早く！」
「…わかった。あんたも早く合流しろよ」
…焦凍君の姿はもう見えない。ちゃんと行ってくれたみたいだ。
「…はぁ。アダム、出てきて」
『あぁ……って、なんだよその怪我！誰にやられた！？』
「別にこれくらい大丈夫だよ。…今の状態を把握したいから人目のつかない高い場所まで私を連れて行って欲しいの。今は合流して戦う気分じゃないし」
『んな怪我してんのに戦わせる訳ないだろ。…はぁ、しっかり捕まってろよ』
アダムは私を抱き抱えると高く飛び上がり、お願い通りに皆がいる場所から見て死角になっている高所まで連れて行ってくれた。
「よく見えないけど…あれ相澤先生？」
『死にかけてんじゃねえかアイツ』
「いや、でも救援が来てるみたいだから死にはしないはず…」
遠いのでよく見えないが、どうやら救援に来たプロヒーロー達と敵連合が戦闘を繰り広げているようだ。
その中にはオールマイトもいる。
「これ、敵連合側が押されてるね…」
『んだよ。死柄木とかいう奴、結局口だけかよ。お嬢に協力までさせといて』
「選択肢がなかったとはいえ、協力するって言ったのは私なんだからそんな事言わないの…」
勝ち目がないと悟ったのか、敵連合は撤退を始めたようだ。
…まぁ、弔さんと黒霧さんは無事っぽいし別にいいや。
「アダム、私達も合流するよ」
『…おう』
アダムは私を地面に下ろし、ゆっくりと消えた。
そして私は急いで走ってきたかのような演技をしながら皆の元へ合流する。
…パッとしない戦果だ。つまらない。
弔さんは少し雄英生を舐め過ぎていたかもしれないな。
________結局その日は弔さんに呼び出される事なく、私はアパートに直帰した。
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作者名：匿名 | 作成日時：2020年7月9日 4時
