黎明 ページ31
現在時刻、午前５時半。
私は寒空の中、人を待っていた。
はぁ…と吐く息が白くなる。早く来てお願いします超寒い。
「お、ちゃんといるじゃねぇか」
「合ってて良かったって、言うべきなのかな」
一昨日、アジトから出るときに囁いていった言葉。
『明後日、夜明け前にあの山で』
あの山。“荼毘くん”との思い出や記憶に山なんてない。
“あの子”との思い出にも山はないが、もし、もしも荼毘くんがあの子だったら、あの山というのは一つしかないだろう。そんな思惑でここへ来た。
そこに、彼が来た上にあの反応、もう、間違いはない。
荼毘くんが私の目の前へきて、立ち止まる。
「…燈矢くん？」
「……」
私の問いかけに彼は答えない。私をただまっすぐ見つめている。
うすぼんやりとした、夜明け近くの暗さでも彼の瞳の中に私が映るのは見えて、心がただ満ちていく。
「燈矢くん、だよね。だって、そんなに綺麗な
「…あァ」
「私とツガイになりませんか」
「ならねェってあんとき言っただろ」
「翌日くらいには、気分が変わることもあると思って」
空いた時間を埋め合わせていくように、くだらない会話を混ぜながら過去のことを話した。
彼に何があったのか、どうやって今の彼があるのか。
それを聞いた私は、言葉が出なかった。
「ぁ…」
やっとの思いで口から出た声は情けなくて。
「俺は。エンデヴァーを地獄に落とす為に今ここにいる。てめェの居場所を奪ったのは俺だが、今ならまだお前は陽の下に戻れるぞ」
こんなところまで来たのに、彼は私を陽の下へ戻す気なのか、試しているだけなのか。でも。
「…戻らないよ」
「今戻らねェとお前は死ぬ。俺がお前を殺すからだ。」
「戻らない」
「…お前、俺の事大好きだな」
「うん、好き。愛してる。燈矢くんの為なら、燈矢くんの望みなら、どこまでも逝くよ」
だって。
「再会したときに覚悟は決まってる」
「はぁ……喉が渇いた」
「へ？」
少しの間があって、燈矢くんがそう口にした。
「なんでもねぇよ、陽が登ってきたな。もう夜が明ける」
「綺麗…この空。なんて言うんだっけ…」
前に思った時、ちゃんと調べたらよかったな。
「黎明」
「え？あ……」
そうだ、黎明。黎明の空って呼ぶんだ。
「燈矢くんの目は、黎明色だね」
「お前知らねェだろ、黎明色は紫だ」
「燈矢くん頭いいね」
「お前がバカなだけだろ」
「あはは」
夜が、明けた。
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m(プロフ) - コメント失礼します。どちらのエンドも作ってくださるとは本当に有難いです。これから、更新再開にワクワクした気持ちで待つのが楽しみです。これからも心より応援しております。この作品を作ってくださり、読者のことを考えてくださり、本当にありがとうございます。 (2023年2月10日 21時) (
レス) @page36 id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
どこぞのオタク - ぅぴゃぁ 尊い (2023年1月22日 17時) (レス) @page25 id: 625a6655ea (このIDを非表示/違反報告)
モブZ(プロフ) - 話の内容や主人公の性格性とか荼毘の言動とかめっちゃ好きです！更新頑張って下さい！ (2023年1月22日 2時) (レス) @page24 id: 4e3074e3cf (このIDを非表示/違反報告)
燈 - 社畜に年末年始など無いのです。更新遅くてすみません、気長に待って楽しんでいただけたら幸いです。コメントありがとうございます。励みになります。 (2022年12月28日 14時) (レス) id: 9e19da6f1a (このIDを非表示/違反報告)
かもめさ - 最高すぎます…！！！もう好きでしかないです。更新を楽しみにしています！！！ (2022年12月21日 11時) (レス) id: 41ebbd34c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：燈 | 作成日時：2022年12月7日 11時
