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二九日 ページ30

ある日、その日は銃の訓練の日だ。
自分は剣なら出来るのだが銃は全くもって出来ず、今日の訓練は憂鬱だった。


しかも、尾形上等兵が訓練の指揮官という物だから厳しいのだろうと、またまたここで憂鬱になる。


「試しに、あそこにある的に弾を当ててみろ」


尾形上等兵殿がそう命ずるので、皆三十年式歩兵銃をそれぞれの目の前にある的に向かって構えた。


鉄砲を渡された時は余りにも重くてよろけたが、次第にそれは慣れていき、持ち歩くのが簡単になった。


「用意」


上官が命ずる。
自分は苦しくない程度に息を潜めた。

そして


「撃て!」


ドォン


その音と共に自分の体は後ろへと引っ張られた。
いや、鉄砲から押し出されたと言った方がいいだろうか。

自分は一瞬中へ投げ出され、頭を地面にうちつけ地面に擦り付けた。


「うっ」


小さな悲鳴を吐き出してしまった。
周りの者は一斉に自分に目を向ける。


まぁ、無理もない。
自分だけが鉄砲の衝撃で投げ出されたからだ。

恥ずかしさと虚しさがその視線から湧き出た。



「おい和。お前全く出来ねぇんだな」


いつの間にか腕を組み、背後でしゃがみこむ尾形上等兵を森畠は恐ろしげに覗き込んだ。


「も、申し訳ございま·····」
「俺が聞きてぇのは謝罪じゃねぇよ。」


そう言うと、尾形は森畠の頭を乱暴に掴んだ。
森畠は突然のことに驚き、何が起きたのか瞬時に気が付かなかった。


「何故、銃も出来ねぇのに軍に入った。
何故、弱々しいのに兵になろうとした。

半端な気持ちでやるんじゃねぇよ。
ここは、そんな甘っれる場所じゃねぇんだ」


小声で囁かれたその言葉は心の奥底へと無理やり押し込むように沈んだ。

図星を付かれた。
血液が頭を巡った。
声が出なかった。
言葉が分からなかった。



つまり、虚しい。
矛盾している気がするが、何も悲しみ、自分への哀れみが無くなったこの気持ちは、虚しいと言うのが正しいだろう。

そして尾形は森畠に解う。



「帰るか?岩手に」


選択は、_______________

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赤青ほとゝぎす(プロフ) - 忍者氏さん» コメントありがとうございます!はいっ勇作さんも大好きで大好きで予定より早めですが登場させました!あの笑顔って営業スマイルって呼ばれてるんですね…!(伝わってるのがすごい)笑顔がぎこちない尾形上等兵も大好きでこちらも登場させました! (2019年2月13日 18時) (レス) id: e1ece6f77f (このIDを非表示/違反報告)
忍者氏(プロフ) - こんばんは!勇作さんでましたね…!尾形の営業スマイルが思い浮かびます笑今回のお話もとても好きです( ´∀`) (2019年2月13日 0時) (レス) id: 5510d14e32 (このIDを非表示/違反報告)
赤青ほとゝぎす(プロフ) - 忍者氏さん» こんばんは!私ニコニコ初めてだったんですが、まさか.....反応してくださるとは思ってもいませんでした(--;)そして、最近最新なくてすみません。勉強の野郎が邪魔をしてくるんです.....w (2019年2月4日 22時) (レス) id: e1ece6f77f (このIDを非表示/違反報告)
忍者氏(プロフ) - めろんMiiです!お久しぶりです。ニコ生面白かったですね…僕もなにかコメントすればよかったです笑 (2019年2月4日 19時) (レス) id: a461264cdc (このIDを非表示/違反報告)
赤青ほとゝぎす(プロフ) - めろんMiiさん» ありがとうございます!(●´▽`●)やっぱり男前のキャラはカッコよく登場させなければと言う使命感が働きまして...^^ (2019年1月4日 14時) (レス) id: e1ece6f77f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:赤青ほとゝぎす | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年12月12日 23時

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