人間なのに、首を切られた

35.恩人 ページ35

*



髪を揺らしながら


煉獄さんはこちらを見た。


目の炎が悲しく揺れている。




A「…お仕事をもらえて、寝る場所をもらえて、

食事をもらえて、いろんなことを教えてもらって


最近よく、胸のあたりがほわほわします。」




そっと胸に手を当てる


心臓の音を感じる



生きているから




A「あのとき、切られたから


私は今…生きて、います。



ありがとう、ございます。」



おかしいのかもしれない


でも、村にいたときは



もっと




痛かった



苦しかった




でもそのことにも気づけなかった。



生きているのか、分からなかった






ここは心地よい場所で


首を切られたから、今ここにいる



産屋敷「…そうか。

Aは今、蝶屋敷で暮らしているのだね。」


しのぶ「はい。」


産屋敷「幸せに暮らしているのなら、良かった。」



微笑んだ口元から出る声は、


本当に安心した声で、



また胸のあたりがほわほわした



産屋敷「A。君は自分が鬼だと思っていたようだけれど


誰かにそう言われていたの？」



A「村の人に…

私は、色が…ないですから」



この人に聞かれると、言いにくいことも答えてしまう。



不思議…





産屋敷「…Aは鬼にあったことがあるかい？」






正直に答えれば、




殺されてしまうんだろうか





あの人は、私の恩人





でも、この人に嘘は付けない、



A「っ、ぁ…ぇっと、」




口から声にもならない音がこぼれる。




手がわずかに震えているのを感じた。





だめだ、あの人は恩人で






どうしたら、…





*

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