人間なのに、首を切られた

29.あたたかいもの ページ29

*


次の日もお仕事をもらったから、することがあって安心する。


働いていれば、自分はここにいてもいいと



勘違いできる。




「ねぇ！あなた、」



A「…はい、？」


呼ばれて顔を上げると、目が合った女性が口を開けて止まっている



あ、そうだ。勘違いしていた




自分の見た目は鬼





急いで近くにおいてあった着物を被った



A「ご、ごめんなさい。気味、わるい、ですよね…」



「え、逆逆！ごめんね、

初めてそんなにきれいな人みたからびっくりしちゃった。」




きれい、ではない


がりがりの腕もやつれた頬も


何より色がない



A「？、あの」


「あ、そうそう。あなたでしょ、私の隊服直してくれたの。」

彼女の手には確かに昨日私が縫った服がある。


A「すみません、どこか変でしたか？縫い直します。」

「ううん、逆！野田かおりって縫ってくれてたでしょ？

でも自分の名前の付いた服なんて初めてだった！ありがとう。」



ほわほわ



なんだろう分からないけど、ほわっとする



野田「あ、そうだ！あなたの名前は？」


A「A、です。」

野田「A、ほんとにありがと！この服ならもっと頑張れそう！」



握られた手が暖かくて




笑顔が眩しくて




どうしたらいいか分からないのが、少し悲しい





炭次郎「あ、A。

まだお風呂には入ってないよな？」


こくりと頷く。


後ろには竹を咥えた女の子がいた。


この前眠っていた、鬼の子だ。



炭次郎「明日には任務に向かわなきゃいけないんだけど、

その前に禰豆子もお風呂に入りたいみたいで。

俺が入れるのはさすがに嫌かもしれないから、お願いしてもいいかな？」


A「はい、」



炭次郎「ありがとう。」



また胸の奥が、ほわほわする


ぽす

ねずこさんが私の頭を撫でている。



ほわほわ、



あたたかい




A「ありがとう、禰豆子さん。」


禰豆子「むー！」


*

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