人間なのに、首を切られた

26.怖い人？ ページ26

*





A「ぁ、」



殺しに来たのだろうか


そんなはずない、私は人だって言ってもらった。





でも、ほんとうに？



着物を握る力が強くなる


心臓が、どくどくと音を立てた



全身の血が、叫んでいるみたい





炭次郎「A！？」



走りなれていない足で踏みしめるたびに視界が揺れる



逃げたって仕方がない


でも、恐怖というのは消えないもので




シュッ

「待ってくれ、話がしたいんだ。」


走って逃げたのに、一瞬で追いつかれた


明らかに強い人




怖い、こわい


こわい

怖い



突き当りを曲がったら


肌色の、壁



何かにぶつかって被っていた緑と黒の着物がはらりと落ちる。


離れようとしても、身体が押さえられていて動かない



A「？？？っ、ぇ、ご、ごめんなさ、」




「おいおい、何追い詰めてんだよ煉獄ゥ。」



昨日聞いた声



私を肯定してくれた声だった。


ぶつかって体が傾いたまま見上げると、白い瞳と白い髪が見えた。





A「し、なずがわ、さん、」



不死川「名前覚えてたんか、賢ぇな。」




ぐいっと体を引いて立たされて


しゃがんで落ちた着物を被せてくれた。



日が高いから、気を使ってくれたのかもしれない




煉獄「追い詰めてなどいないぞ！話がしたかっただけだ！！」



不死川「自分の首切ったやつが

とんでもねぇ勢いで追いかけてきたら怖ぇだろうが。」



煉獄「確かに!!

すまん、怖がらせてしまっただろうか！」




しゃがんで顔を覗き込まれる


ビクッと自分の肩が揺れた



自然としなずがわさんの後ろへまわる


この人は、安心するから



煉獄「！！不死川


なぜ君はそんなに好かれているんだ！」


不死川「さァな。」




後から顔を出してもう一度顔を見てみる


ちゃんと顔を見たのは初めてだった



まっすぐな瞳が燃えているみたい




あの時とは違う、優しい色の炎



悪い人、ではないのかも


少なくとも今は攻撃する気はないらしい




ようやく、空気が体を回り始めた






*

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