3.私が 初めて あげられたもの。 ページ3
*
澄んだ月の夜だった。
「鬼さん、私、鬼のようだって言われてきました。
本当に、鬼さんの家族だったらいいのに。」
「そうか。」
ぶっきらぼうにでも、答えてくれるだけ嬉しかった。
その赤い目には何も映ってはいなくて
きっと私も、
「鬼さん、私、遠くへ行ってみたいです。
どこかに私とおんなじ人…鬼が居るのかもしれないから。」
「そうか。」
夜の風が寒かった。
虫の声が聞こえてくる。
虫は近くで鳴いているような気がした。
でも、姿は見えなかった。
「鬼さん、
私に、新しい名前をくれませんか。」
「…A。」
「A、Aですか。」
繰り返し、言葉にしてみると、心がほわほわした。
鬼さんが、くれた、名前
「お前も何かつけてみろ。」
「え、」
「鬼さんといつまで呼ぶつもりだ?
鬼なんぞ、いくらでもいるというのに。」
どうしよう、この美しい人に、鬼に、見合う名など、
私に思いつくだろうか。
でも、言葉は多く知らないし、案外すぐに決まった。
「ゆうや。」
「ほう。理由は。」
「燃える、夕焼けみたいな赤い瞳に、
夜みたいな、深い黒の髪を持ってるから。」
鬼は、手を顎に当て一息考えていた。
「まぁまぁだな。
お前がそう呼ぶことを許してやる。」
「ゆ、夕夜さん。えへへ、ゆうやさん。」
私が、初めて、鬼さんにあげれらたもの。
「だらしのない笑い方だな。」
鬼さんも笑った。小馬鹿にしたような笑いだった。
それが、心地よかった。
*
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まゆゆ(プロフ) - ヒロインちゃん可愛いっ!更新待ってます♪ (4月16日 22時) (レス) @page35 id: d6c6f36b97 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - とても素敵なお話です!続きが気になります!更新を楽しみにしてます⸜( •⌄• )⸝ (2月4日 11時) (レス) @page28 id: 311499c733 (このIDを非表示/違反報告)
はる - やば、めっちゃ最高…!!ゆっくりでいいので更新待ってます‼ (2月3日 22時) (レス) @page28 id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
初心者です! - 面白すぎて地球滅ぼせますy(((すっごく面白いです!これからも無理せず更新頑張ってください! (1月2日 17時) (レス) @page27 id: 4136f150ea (このIDを非表示/違反報告)
ちだまり(プロフ) - 更新されてる😭大好きです…!!これからもゆっくり頑張ってください😭💪 (12月31日 18時) (レス) id: 10c37c042f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:福笑い | 作成日時:2022年9月5日 16時