迷宮ラビリンス (ページ7)

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「松川さんは照れ屋さんで猫舌」
「市川さんはここに寝癖あり、と」
「あーっ！せっかく直りかけていたのに…なんてことするんですか松川さん」
「んー？でも、ここだけはねてるの可愛いよ？」

寝癖があるところを触られて、くるくると指に髪を絡ませて遊んでいる松川さん。

顔に熱が集まるのを感じる。
そんな私の顔を見て松川さんは口角を上げた。

「市川さんも、照れ屋さんだね」

してやったりな顔をしている松川さん。

態と、も、の部分を強調して言ってきた松川さんに「大人げないですよ」というと「気になる子にはちょっかいだしたくなる餓鬼なんでね」と言われ、再度顔に熱が集まるが松川さんがそれを見て腹を抱えて必死に笑いを堪えているのを見て揶揄われた、と理解したのは会話を聞いていた及川さんが吹き出してからだった。

▽

時間になって早速、資料室に案内された。

図書館のような膨大な数の資料があって思わずすごいと呟いてしまい、ハッと口を押えるが「大丈夫、ここあまり使う人いないから」と言われ安心する。

「まあ、俺らも過去の市場調査結果とか見に来るくらいであとは大体データ化されているからそんな覚えなくてもいいよ。
と言ってもこの量は覚えるのは無理だし、俺も覚えてないから覚える必要がないかな」
「これだけあると、年代ごとに並べられていても見つけるのは大変そうですね」
「本当に。稀に探すときあるけどすごい大変」

そろそろ戻ろうか、という一言で二人で資料室から出るとちょうど及川さんと国見さんがこちらに歩いてきていた。

向こうも案内されているところなのかこちらに気づき手を振ってきた。手を振ってきたのは勿論及川さん。

さすがに振り返すなんてことはできないので頭を下げた。

「お疲れさまです」
「お疲れ～資料室、俺らもこれから使うから鍵預かるよ」

及川さんに鍵を渡して一度営業部に戻ってカバンを持って、ホワイトボードにある自分の名前のところを外出中と書いて外に出る。

初めての外回りだ。

今日は商談とかじゃないから挨拶するだけでいいよ、と言われたがそれだけでも十分緊張はしている。