142 ページ50
・
「……」
僕と西陰しかいない観客席スペース。いつもだったら彼女もいるんだけど、今日はいない。……それはそうだ。だって今までは彼女を呼びに行って連れ出していたのだから。今日は彼女の部屋には行っていないため、きっと部屋にいるんだろう。
あの子は自分の意思で動くというものに疎い。それに、機械類の操作方法も良く分かっていないみたいだから、調べるという行為もできないだろう。つまり、今ここにいない彼女は自身に割り当てられた部屋にいるって訳だ。現に僕の携帯から確認できる位置情報も寮を指している。
……なのに。
「……氷浦貴利名」
最近彼女からよく聞く名前の人物が視界に入る。チームとの連携でシュートを決め、得点を奪ったようだ。
……彼の何があの子を動かした？
まだ接触して1ヶ月ほどしか経っていないと言うのに。
「……分からない」
どうして彼を見ていると、敵視しているような気分になる？
彼に限らず、他のチームメイトも僕にとって敵と呼ぶほどの相手ではないと言うのに。
「……Aの奴、会場に来ているんでしょうか」
「さっき確認したけど、部屋にいるみたいだよ」
「……そうですか」
「何？ 気になるのかい？」
「まあ。自分から行きたいと言うような奴と思わなかったので」
西陰の思っていた事は、僕が思っていた事と同じだった。自主的な動きを見せるようになったのも、彼が影響しているのなら……。
「しばらく外に出さない方がよさそうだ」
決してこれは私情ではない。次は準決勝試合だ。氷浦君との接触で、彼女が使い物にならなくなってはいけないと判断した故の考えだ。
「……！」
……いや、そんな必要は無いだろう。彼女が抜けた穴は、他の者で埋めれば良い。なのに何故僕は彼女を省くという考えではなく、外部との接触を遮断するという考えが先に浮かんだ？
「……っ」
ここ最近、彼女の事を考えるとまともな思考回路にならない。気のせいだと思いたいのに、気のせいと呼べない程、いつもの自分でなくなってしまう。
今だってそうだ。
氷浦君を見て、あの子の顔が浮かんで……そして、あの日見た2人の後ろ姿が脳裏に浮かぶんだ。
「これが病気でないというのなら、一体何だと言うんだ……？」
先日、医師に診てもらったが、副作用によるものではないと診断された。
……だったら、この胸の痛みは何だと言うんだ。
4に続く
続編公開しました。
よろしくお願いします！
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恵野(プロフ) - 青碧さん» コメントありがとうございます。惹かれるなんて嬉しい言葉、ありがとうございます…！ 実は書きながら履修している状態だったりします汗 ちょいちょいオリジナル展開を挟ませていただいているので、履修する際はお気を付けください…！ (2022年5月17日 21時) (
レス) id: 78dc1b910c (このIDを非表示/違反報告)
青碧(プロフ) - 初めまして、青碧と申します。文章の書き方に惹かれて気づいたらここまで読んでおりました…そのくらい惹き込まれる展開でございました！アレスは未履修ですが楽しく読ませていただいております！これからも応援しております！ (2022年5月17日 21時) (レス) id: d3cfc8958d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：恵野 | 作成日時：2021年11月7日 15時
