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「ここが王帝月ノ宮」
「……大きい」
しばらく歩いて辿り着いた場所……王帝月ノ宮は自分の想像していた以上に大きく綺麗な学校だった。……ここの寮にAさんは暮らしているんだ。
「あの、氷浦」
「うん？」
「今日は、その……あなた方雷門の試合を見て学ぶことがありました。そして、
目を伏せて、視線をチラホラとさせているAさん。その姿が俺には言葉を探しているように見えた。
Aさんが言いたい気持ちが何なのか、今彼女が伝えてくれた言葉を頼りに考え……見つけた。
「”ありがとう”って言いたいのかな？」
「ありがとう？」
「ありがとうって言うのは感謝の気持ちを伝える言葉なんだ。自分にとって影響を与えたものに対する嬉しさとか喜びとか……それを今Aさんは言いたいんじゃないかな」
あ、Aさんは嬉しいとか分かるかな……決して馬鹿にしている訳ではなくて、彼女は感情に疎いから分かるかちょっと疑問に思っただけだ。
「嬉しいとはどういう意味でしょうか？」
「そうだなぁ……気分が楽に感じる、とかかな。どこか軽く感じたり、気分が晴れやかな感じ」
「……なるほど。今の自分に当てはまる気がします。貴方から教わることでひとつ新たな発見を感じる度に、疑問が晴れた気分になるのです。これがきっと嬉しい。そして、」
Aさんが顔を上げた。その表情を見た瞬間、俺は固まってしまった。
だって、Aさん今＿＿＿
「その嬉しさを貴方に伝えたい。これが”ありがとう”という気持ち」
＿＿＿笑ってる。
その口角があがることはないんじゃないかってほどに無表情である彼女が今、俺に笑みを向けている。その笑みに俺は視線を外せなかった。
「ありがとう、氷浦」
心なしか、その言葉を乗せた声音も嬉しそうに聞こえて。彼女の笑顔と声に俺は心臓が大きく脈打った事に気づく。今まで感じた事がなくて、今の自分の気持ちが良く分からない。ドキドキしていて、彼女を正常な気分で見つめる事ができない。
「ど、どういたしまして」
「？ 氷浦、顔が赤いですよ。気分が優れないのですか？」
「えっ！？ いや、元気だよ？ 顔が赤いのは……えっと、夕日が当たってるからかな！？」
……なんてごまかしたけど、顔が赤いのは事実だ。
なんで照れているんだろう、俺。自分の抱いた気持ちが分からないままAさんと別れ、今暮らしている場所である木枯らし荘へと足を進めたのだった。
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恵野(プロフ) - 青碧さん» コメントありがとうございます。惹かれるなんて嬉しい言葉、ありがとうございます…！ 実は書きながら履修している状態だったりします汗 ちょいちょいオリジナル展開を挟ませていただいているので、履修する際はお気を付けください…！ (2022年5月17日 21時) (
レス) id: 78dc1b910c (このIDを非表示/違反報告)
青碧(プロフ) - 初めまして、青碧と申します。文章の書き方に惹かれて気づいたらここまで読んでおりました…そのくらい惹き込まれる展開でございました！アレスは未履修ですが楽しく読ませていただいております！これからも応援しております！ (2022年5月17日 21時) (レス) id: d3cfc8958d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年11月7日 15時
