120 ページ28
・
「分かる、分かるよ。……いや、楽しいって思わせてみせる。言ったでしょ？ 俺が教えるってて」
初めて彼女に会ったときに俺は宣言した。サッカーの楽しさを教えると。そのことを彼女は覚えているだろうか。
「……そうでしたね。貴方は自分の考えを否定しました。それは貴方が答えを知っているからですよね？」
「Aさんの納得がいく答えを出せるかはわからない。だからこうして一緒に答えを見つけたいんだ。なによりもAさんに理解して欲しいから……誰かと一緒にサッカーすることの楽しさを」
さ、もう少しやろう？
そう俺が言うとAさんは迷う事なく頷いた。
今度はパスではなく、ボールの奪い合いをする。やはり”光”と言われるだけあり、彼女はとても速い。
「やるな、Aさん！」
「これくらい、まだ序の口ですよ」
俺達が決勝を勝ち進めれば、彼女の所属する王帝月ノ宮と対戦するかもしれない。もし、王帝月ノ宮を倒し、彼女のサッカーが間違っていることを知らしめれば……もしかすれば。
「そろそろ切り上げないと、暗くなっちゃうな」
時間経過を忘れ、ただボールを蹴っているといつの間にか日が沈みかけている事に気づく。流石に帰りが遅くなるのはお互いまずいだろう。特にAさんはそのところ厳しいイメージがある。
「Aさん、送っていくよ。家はどこ？」
「王帝月ノ宮の生徒は全寮制です」
「わかった。じゃあ学校まで送るよ」
「帰り道は分かっていますよ？」
「そうじゃなくて。もしAさんが危ない目に遭わないか心配なんだ」
女の子を一人で帰らせるのは危険だ。それに、Aさんは突然倒れそうな雰囲気があるし……。
「そう、ですか」
「うん。だから俺に送らせてほしい」
「……わかり、ました」
何処か様子がおかしいAさん。気になったのでどうかしたのか尋ねた。
「……どうかした？」
「いえ、その……危ないなど声を掛けて貰った事がなかったので、どう反応したらいいのか分かりません」
Aさんの言葉を理解するまで少し時間がかかった。彼女が言いたいことは、もしかして……心配されたことがないって事？
「俺は今、心配って気持ちなんだ」
「しん、ぱい？」
「そう。俺と別れた後、Aさんに何か起きないか気になってるんだ。それが心配」
「なるほど……」
前から何となく感じていたけど……Aさんって感情に疎い？
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恵野(プロフ) - 青碧さん» コメントありがとうございます。惹かれるなんて嬉しい言葉、ありがとうございます…！ 実は書きながら履修している状態だったりします汗 ちょいちょいオリジナル展開を挟ませていただいているので、履修する際はお気を付けください…！ (2022年5月17日 21時) (
レス) id: 78dc1b910c (このIDを非表示/違反報告)
青碧(プロフ) - 初めまして、青碧と申します。文章の書き方に惹かれて気づいたらここまで読んでおりました…そのくらい惹き込まれる展開でございました！アレスは未履修ですが楽しく読ませていただいております！これからも応援しております！ (2022年5月17日 21時) (レス) id: d3cfc8958d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：恵野 | 作成日時：2021年11月7日 15時
