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「ナイスパス、Aさん」
弱々しい力でボールは俺の元へ戻ってきた。俺が声を掛けるとAさんはどこか不満げな様子で口を開いた。
「今のはパスとは言えません」
「なら、Aさんのパスはどんなものなのか俺に見せて！」
そう言って俺はさっきより強めにボールを蹴り、Aさんを置いて走り出す。
「……自分のデータだけ知っても意味はないと思われますが、まあ。いいでしょう」
そろそろかな、と思いながら後ろを振り返る。俺の視界に入ったのは、まさに今ボールを蹴ろうとしているAさんだった。
そのスピードはパスと言うには少し速いように感じたが……取れない程ではない。
「ふっ！」
「！ ……なるほど、この程度は取れるのですね」
「さっき自分のデータを知るためかって言ってたけど、今の発言だと俺の事を分析しているように聞こえるけど？」
「貴方とはこうしてボールをパスすることはないでしょうから、どの程度の力加減が良いか測っていただけです」
どうやら俺に気を使ってくれたらしい。……俺の強さを知って欲しいために誘ったわけじゃないから、そんなことしなくてもいいのに。
「そんなこと気にしなくても、俺は絶対にAさんのボールを取るよ」
「……何故です？」
「なんでって、誰に対しても言えるけど、俺にボールをパスしたってことは、俺を信頼してるって意味なんじゃないかって思うんだ」
「しん、らい」
「ボールを安心して預けられる、任せられるって相手に認識してもらえているって思っちゃうんだ。今こうしてAさんからパスを貰えたのは、そういう事なのかなって思っちゃった」
パスするだけなら別に走らなくてもいい。始めにやったように、その場で蹴り合うだけでいい。
彼女にとっては、ただ相手が俺しかいなかったからだとは思うけど、それでも少し嬉しいと思ったんだ。
「……自分は、氷浦を信頼しているのでしょうか」
「それは俺に聞かれても分からないよ。その答えを知ってるのはAさんだけなんだから」
こうして話すようになってまだ1ヶ月程。俺は初めのインパクトが強かったってこともあって、その短い時間の間で既に頭のどこかにAさんがいる状態だった。
あの時、思い出せない大切な人を考えて涙を流した彼女の力になりたい。
こうして彼女との繋がりを保とうとしているのが証拠だ。だけど、Aさんは俺をどう認識してくれているのか。純粋に気になった。
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恵野(プロフ) - 青碧さん» コメントありがとうございます。惹かれるなんて嬉しい言葉、ありがとうございます…！ 実は書きながら履修している状態だったりします汗 ちょいちょいオリジナル展開を挟ませていただいているので、履修する際はお気を付けください…！ (2022年5月17日 21時) (
レス) id: 78dc1b910c (このIDを非表示/違反報告)
青碧(プロフ) - 初めまして、青碧と申します。文章の書き方に惹かれて気づいたらここまで読んでおりました…そのくらい惹き込まれる展開でございました！アレスは未履修ですが楽しく読ませていただいております！これからも応援しております！ (2022年5月17日 21時) (レス) id: d3cfc8958d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年11月7日 15時
