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「そっか。俺の気のせいだったかな」
「はい。気のせいかと。自分が雷門にいた選手だと前にも言われましたが、それは間違いです。認識を改めてください」
「う、うん。分かった」
どうすればAさんは思い出す？
かつての仲間だった元雷門のメンバーを。映像の中でしか見た事のないあの表情を。
『なら、一緒にサッカーするとかどう？』
どうすればAさんが元雷門のメンバーを思い出してくれるか。その事ばかりで頭が凝り固まりそうになった時、明日人の言葉を思い出した。それと同時にどうしてAさんを誘ったのか、ここに連れてきたのかも。
Aさんが河川敷について覚えがあるってことを知って、本来の目的を忘れかけていた。
「＿＿＿Aさん。サッカーしない？」
一緒にサッカーをすることで、本来の彼女を取り戻す……ことはきっとできない。けれど、夢にでてきた人の事を少しでも手助けできればと、そう思ったんだ。
「自分のデータを収集するためですか？」
「絶対言うと思った……違うよ」
「では、なぜする必要があるのですか？」
「理由なんてない。ただサッカーをするだけさ」
「……理解、できません」
Aさんにとってサッカーは『大切な人を救うため』だ。だから彼女には意味もなくサッカーをすることがよく分からないらしい。
「みんな初めは理由もなくボールを蹴るんだよ。ただそこにボールがあるから。そこから同じ人を見つけて、一緒にボールを蹴って、奪い合って……それがいつの間にか楽しいって思うようになるんだ」
Aさんに語った言葉の裏では、自分が体験してきたこと……伊那国島で明日人達と一緒にサッカーをしていた時の思い出が頭に浮かんでいた。
Aさんはサッカーとどんな経緯で出会って、するようになったのかな。……いつか、そのことを聞けるといいな、なんて。
「さ、ただ蹴るだけ。ほら」
俺は持って来ていたボールを地面に落とし、そのまま軽く蹴ってAさんへパスをした。Aさんは蹴り返すことなく、ただ転がってきたボールを見つめていた。
こちらへと視線を上げた。その表情は何をしたら良いか分からず、困惑しているように見えた。
「……こう、でしょうか」
俺に向けてボールを蹴ったAさんのパスは、試合で見かけるものと違って、今の彼女の心情だと思われる困惑を表したような弱々しかった。
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恵野(プロフ) - 青碧さん» コメントありがとうございます。惹かれるなんて嬉しい言葉、ありがとうございます…！ 実は書きながら履修している状態だったりします汗 ちょいちょいオリジナル展開を挟ませていただいているので、履修する際はお気を付けください…！ (2022年5月17日 21時) (
レス) id: 78dc1b910c (このIDを非表示/違反報告)
青碧(プロフ) - 初めまして、青碧と申します。文章の書き方に惹かれて気づいたらここまで読んでおりました…そのくらい惹き込まれる展開でございました！アレスは未履修ですが楽しく読ませていただいております！これからも応援しております！ (2022年5月17日 21時) (レス) id: d3cfc8958d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年11月7日 15時
