113 ページ21
・
「いいんですか、野坂さん。彼奴は要監視の対象……野放しになどすれば竹見のように……！」
「大丈夫さ。元々監視は彼女に付いている。僕達がいなくてもね」
この僕が感情任せで彼女に言ったと思った？
ちゃんと分かって言ったんだよ。
僕が連れ出そうとも彼女には常に監視が付いている。初めはなかったんだけど、度々副作用を起こすAに着けざるを得なかったんだろうね。知らない場所で倒れて他人に見つかり、こちらの内情がバレない様に。
この場を去った彼女を監視役が追っているはずさ。
「それに、監視役が見失ったとしても僕は
「携帯……あぁ、位置情報ですね」
「そう」
僕の携帯はAの携帯と位置情報を共有している。彼女は携帯の使い方が分からないから、誰に対しても”見られている”ということを知らない。
「でも、珍しいですね」
「？ 何が？」
「……失礼なのを承知で申し上げますが、先程の野坂さんはAに『行って欲しくない』と言っている様に聞こえました」
「それは、彼女は要監視対象で、脱走を考えているんじゃないかと思っての事で……」
西陰の言葉に対する僕の言葉は、まるで言い訳を言う子供のようだった。そのことに気づき、言葉を詰まらせてしまう。
口にしたことは思っている事で間違いないはずなのに、何故か違和感が残る。なぜか『これが言いたいことじゃない』って言われている気分だ。
「……帰るよ、西陰」
「はい」
違う、違わない。
自分の発言を肯定しようとしても、別の誰かがそれを否定する。”それが本心なのか”と。
その言葉を振り払うように僕は首を横に振る。……だけど、離れない。
これでは竹見のことを言えないではないか。
「……！」
偶然見かけたベージュ色の髪と、薄い青色の髪。後ろ姿だったけれど、誰なのかすぐに分かった。僕が好きにしろと行かせたんだ。何も思う必要などない。……なのに。
「……どうして気になるんだ」
元々僕達は他人同士。彼女は僕達の領域に突然やって来た存在だ。普通ならここ……王帝月ノ宮とは一切関わる事はなかったんだ。だけど、オーナーと何かの契約をしたことで、こちら側の人間に……アレスクラスタになってしまった。
僕は彼女に同情しているのか？
人としての心はとうの昔になくなっているはずなのに。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恵野(プロフ) - 青碧さん» コメントありがとうございます。惹かれるなんて嬉しい言葉、ありがとうございます…！ 実は書きながら履修している状態だったりします汗 ちょいちょいオリジナル展開を挟ませていただいているので、履修する際はお気を付けください…！ (2022年5月17日 21時) (
レス) id: 78dc1b910c (このIDを非表示/違反報告)
青碧(プロフ) - 初めまして、青碧と申します。文章の書き方に惹かれて気づいたらここまで読んでおりました…そのくらい惹き込まれる展開でございました！アレスは未履修ですが楽しく読ませていただいております！これからも応援しております！ (2022年5月17日 21時) (レス) id: d3cfc8958d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：恵野 | 作成日時：2021年11月7日 15時
