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「自分はただ氷浦のお願いを叶えたいだけ。なのにどうしてゆうまは否定するの？」
「僕の命令は絶対だ。分かっているだろう」
ゆうまの命令は絶対。自分はゆうまに限らず、相手の言う事に対し否定することは許されない。
……だからゆうまが正しい。そう思うのに、どうしてなのか。
『それでも嬉しいよ』
自分が試合を見に来ることを嬉しいと言っていた氷浦が。
『命令じゃなくて……”お願い”だよ』
自分に対して命令ではなく、拘束の緩い”お願い”というものを伝えた氷浦が。
『じゃあな、Aさん』
去り際にこちらへ手を振り……優しそうな顔をして、口元を緩めていた氷浦が離れない。
「……ゆうまなら、許してくれると思った」
「！」
「ゆうまは優しいから。でも、今のゆうまは……怖い」
これはゆうまの命令から背いているということになるんだろう。なのに自分はゆうまの命令より、氷浦のお願いを叶えたいと思っている。
「まさか逃げたいとでも思ったの？」
「……逃げる？ 何から？」
「王帝月ノ宮から。サッカーから」
「それは違う。自分はサッカーをすることを条件にここにいる。自分の目的の為に」
「へぇ、その目的は何なんだい？」
ゆうまはその場で足を組み、自分を見下ろす。膝の上に肘を置いたゆうまの顔は……やっぱり怖いと感じてしまう。
でも、ゆうまの問いには答えられる。
「はい。それは”大切な人”を救うためです」
「……そう」
「だから、自分は逃げるなんて事はしない」
自分は”大切な人”を救うためにここにいる。それはどんなときでも思っている事だ。
『A』
自分の名前を呼んでいることしか分からないその人……大切な人を救うために、自分はサッカーをする。これだけはずっとはっきりとしている。
「……好きにすれば良い」
「野坂さん！」
これは許可を得たという事だろうか？
であれば早速向かわなくては。
フィールドを見れば選手はもう退場した後だった。氷浦、もう待ってるのかな。そう思いながら観客席を後にした。
「……？」
短く電子音が鳴る。それは自分に渡された携帯端末だった。画面を見れば、試合前に連絡先を交換した氷浦の名前と、氷浦がいると思われる場所が書かれたメッセージが表示されていた。
「返信？ の仕方が分からないから、氷浦に言われた場所に行こう」
前に出す足が軽い。どうして軽いと思うのか、自分にはよく分からなかった。
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恵野(プロフ) - 青碧さん» コメントありがとうございます。惹かれるなんて嬉しい言葉、ありがとうございます…！ 実は書きながら履修している状態だったりします汗 ちょいちょいオリジナル展開を挟ませていただいているので、履修する際はお気を付けください…！ (2022年5月17日 21時) (
レス) id: 78dc1b910c (このIDを非表示/違反報告)
青碧(プロフ) - 初めまして、青碧と申します。文章の書き方に惹かれて気づいたらここまで読んでおりました…そのくらい惹き込まれる展開でございました！アレスは未履修ですが楽しく読ませていただいております！これからも応援しております！ (2022年5月17日 21時) (レス) id: d3cfc8958d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年11月7日 15時
