山神様の目 中編 ページ7
「どうして…我らまで…」
「そうだ、そうだ…」
「ダマらっしゃい!」
「「…」」
「何か悪いな…」
正座をさせられた中級達、
そしてその横に俺も座る。
「良いかい?夏目。
私達の中で、山神様と言ったら、
それはある存在だけを指すのさ。」
そう言うなりヒノエは
ゆっくりと、でも丁寧に俺にわかりやすく
その存在について語り始めた。
彼は…
元は「山神様」とは呼ばれていなかった。
いや、名すらも存在していなかったから、
その山神様という名ですらもいつのまにかついた物であるのだ。
妖にとって名とは何よりも大切な物、
友人帳のように、
紙の上に書いただけで縛られてしまう。
そのものの存在自体を表す形がないものが、
それが、「名」なのだ。
しかし、その存在は名がなかった。
故に彼を縛るものは存在せず、
どの形にも当てはまらない
唯一の存在であったのだ。
しかし、
周りは彼の事を型にはめようと、
神という高貴な位を与えたり、
「山神様」などと
それぞれ彼の事を呼んだ。
「私達、妖は、山神様だけど。
人間には…そうだねぇ、有名どころで行くと、お狐様なんて呼ばれていたかね。」
「お狐さま?
お稲荷さんなら知ってるが…」
「そうだね。
人間にはそっちの方が知られているね。
でも、違いは神様そのものか、神様の使いかって所だよ。」
ヒノエが言うには、お狐様、
もとい山神様は神さまで、
お稲荷さんは神様の眷属らしい。
「うーん、」
「とは言っても、お狐様とは…
ククク、これだから人間は可笑しい。」
クスクスと笑いだす中級達。
「ん?どこがだ?」
「夏目、山神様の姿は
無数の赤い目を持った大きな黒鳥さね。
狐にはどこからどう見ても、
見えないのさ。」
「そうそう、真っ黒、真っ黒!」
「まぁ、今まで目にした事はないけど…」
とボソリと付け足すようにヒノエは言う。
「それなのに、人間達は皆、
お狐様、お狐様って…プププ。」
一つ目の中級は口に手を当てて笑う。
「それよりも、一体全体
どうして夏目は山神様の目なんて物、
気になったんだい?」
「見たんだ。瞳孔が赤くて、
白目が黒い目をした人を…」
そう俺が答えた瞬間、
みんなの顔がサーっと蒼くなる。
「そ、それは冗談で、」
「いや。冗談抜きだ。」
中級が両頬を押さえ、大声で叫ぶ。
「うわーぁ!!祟られる!!
だから、言ったじゃないですか!
ヒノエ殿ぉお!」
「祟られる!祟られる!!」
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おぼろん(プロフ) - 豆腐の角さん» コメントありがとうございます!全然気にしないでくださいね。皆さんに見てもらえるだけでも嬉しいので!これからも頑張ります! (2020年11月7日 6時) (レス) id: a49c31890f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の角(プロフ) - 二章目おめでとうございます!初めの一票取れませんでした………。これからも頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年11月6日 22時) (レス) id: d448052499 (このIDを非表示/違反報告)
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