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毒とは 後編 ページ29

「え?」

もっと何か言ってくると思っていた私は、
彼の言葉があまりにも意外だった。

「あの時、思いました…

貴方は優しすぎるから、
一門に入っても碌に使えなさそうです。」

「…つ、使えない…」

「しかし、妖にも優しいのは、
いかがなものかと思いますが…」

こうして彼は私のことを優しい、優しい、と言うが、そんな彼自身、
妖にはそうではないとして…
人には十分なほどの優しさを持っていると
そう私は思うのだ。

私は見ている…

彼が妖になりかけている私を殺そうとはせず、
閉じ込めるだとかなんかは言っていたとしても…
自分に対する危険も試みずこうして
側に置いていると言う事。

そしてあの時も、やり方はどうであれ
私を彼らからまるで守るかのようにして現れた。

「あのさ…的場。
お前も毒されてなんかいないよ。」

驚いたかのように目を見開いて的場は私に
初めての表情を見せる。
しかし、それも一瞬ですぐさま
いつものポーカーフェイスに戻ってしまった。

「何を言っているんですか?
私が今までどれ程の妖を祓ってきたか、
知ってます?

無数の数の妖を相手にして来たんですよ。
人よりも彼らの殺し方の方が
私は詳しいかもしれません。」

「優しくないって言うなら
じゃあ、あの時なんでお前…私の所に助けに来たんだ?」

「それは…勿論、
貴方に死なれては困りますし。」

そんなの回答になっていないと
私は彼に言う。

「妖になりかけてる私なんて、
祓い屋にとっては殺した方がいい存在だろ?

それでもまだ半分は人だし、
人よりも妖よりもずっと扱い難いって言うのに、よく側に置いておこうって思うわな。」

「それは。」

珍しく言葉を詰まらせる的場。

私はれいじ君にするように
彼に向けて手を伸ばす。

「…。」
流石に頭ポンポンは
此方としての気恥ずかしいので、
背中に手をそっと置いて。

「的場、頑なに自分は非道って言うけど、

私にとっては…
お前は優しく見えるよ。

あの時はありがとう。」

「山神様の…
その目で言われたら
何とも言い返せませないものですね。」

「えっ、妖になってる??」

「えぇ。なっています。」

「嘘ぉ…ばっちり決めたと思ったのに。」

「貴方と言う人は、
最後だと言うのになんか締まりませんね。」

そう言うと彼は初めて人間らしく、
それこそ本当に優しそうに微笑んだ。

過保護もほどほどに 前編→←毒とは 前編



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おぼろん(プロフ) - 豆腐の角さん» コメントありがとうございます!全然気にしないでくださいね。皆さんに見てもらえるだけでも嬉しいので!これからも頑張ります! (2020年11月7日 6時) (レス) id: a49c31890f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の角(プロフ) - 二章目おめでとうございます!初めの一票取れませんでした………。これからも頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年11月6日 22時) (レス) id: d448052499 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おぼろん | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年11月5日 22時

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