検索窓
今日:24 hit、昨日:1 hit、合計:35,979 hit

下水の中の優しさ 前編 ページ26

「Aさん!」
後ろから聞こえてくる夏目君の声。

私は振り向くと、大丈夫だ、と、
OKサインを作った後、大きく手を振る。

「Aさん、貴方には私にだけではなく、周りにも少し警戒心というものを
覚えて頂きたい。

その手を戒めにでもしてください。」

彼はそう言うと何処からともなく
包帯を取り出す。

「いつもそれ持ち歩いてるのか、
大変だな。」

「私は貴方が本当に祓い屋家業をやっている人間なのか、たまに些か疑問に思います。」

危険な仕事ですから、と言うと
彼は私に向けて手を出す。

「…何?」

「はぁ…わかるでしょう。
Aさん、手を見せてください。
手当てしますから…」

「あ、あぁ…そうだ。」

すっかり痛みを忘れていた私。

彼に言われて思い出したことで、
また手が痛み出した。

的場の出したその手に私が自分の手を置いて、初めてそこで傷の酷さを知る。

手のひらの皮が所々めくり上がり
血だらけで、とても痛々しい。

「うわぁ…」

私自身、若干引いてしまうほどに。

「これくらい当たり前です。
あの矢には私の妖術がこもっていますし…

人であれば此処までの怪我はしなかったとは思いますが、今の貴方は半分妖なんですよ?

それ、自覚しています?」

「いや、でもあれ止めなかったら、
確実に誰かやられてたから。」

「それで自分が傷ついては本末転倒ですよ…」

彼は手慣れたように私の手に包帯を撒き始めた。

じんわりと血が包帯に滲み、
赤く染まっていく。
しかし、いつかはそれも止まるだろう。

まるで壊物を扱うかのような優しい手つきに、私は何処か暖かくなったような感じがした。

いや、これは…安心感なのだろうか…

「ありがとう…的場。」

「お礼をいうくらいであれば
貴方のその自己犠牲をどうにかしてほしい所ですね。」

彼は少し呆れたようにそう私に言った。

下水の中の優しさ 後編→←人にはわからない 後編



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
21人がお気に入り
設定タグ:夏目友人帳 , 的場
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

おぼろん(プロフ) - 豆腐の角さん» コメントありがとうございます!全然気にしないでくださいね。皆さんに見てもらえるだけでも嬉しいので!これからも頑張ります! (2020年11月7日 6時) (レス) id: a49c31890f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の角(プロフ) - 二章目おめでとうございます!初めの一票取れませんでした………。これからも頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年11月6日 22時) (レス) id: d448052499 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おぼろん | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年11月5日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。