人にはわからない 後編 ページ25
地面に私はその矢をそっと置いて、ぽつりと呟く。
「案外…これ、痛いな…
刺さったらそれ以上だけどな。」
未だに彼が手に持つ的場の弓矢の放つ部分に手を置いてこれ以上、
矢を放てないようにして彼に笑顔を向けた。
「ま、的場。
お茶で遅れたのは本当に悪かった。」
「私はそんな事を聞いていません。
貴方は、何をしているのですか？」
的場は私に質問をかけるが、
その整った顔はあまりにも無表情で
いつものようなあの笑みはなかった。
私は彼を説得する様に、ゆっくり話す。
「的場…彼らは妖だ、
人間にはわからない事をする。
でも、それは別に悪意が
あった訳じゃないと思うんだ…
だから、傷つけないで欲しい。」
私は真剣な表情で彼を見つめ返す。
「意味がわかりません。
では、Aさん、
貴方は傷ついてもいいのですか？」
「私の怪我もそこまでひどいものじゃなし…
いや、でも、頼む…的場。
今回だけは、見逃してやってくれないか？」
「…。」
「頼む。」
的場は身を翻すと私に言う。
「今日のお茶に行く予定はまた今度にしましょう。
そんな手じゃあ湯呑みも持てやしません。」
あぁ、よかった。
その安堵感から、
山を降りて行く的場の背を追いかけながら
私は頬を緩ませた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おぼろん(プロフ) - 豆腐の角さん» コメントありがとうございます！全然気にしないでくださいね。皆さんに見てもらえるだけでも嬉しいので！これからも頑張ります！ (2020年11月7日 6時) (
レス) id: a49c31890f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の角(プロフ) - 二章目おめでとうございます！初めの一票取れませんでした………。これからも頑張ってください！楽しみにしてます！ (2020年11月6日 22時) (レス) id: d448052499 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
