腕のあざ 前編 ページ21
「あいつら、
どんだけキツく結んだんだ…」
だいぶ苦戦していたらしい夏目君。
やっと縄が解かれた私は痛む手首をさする。
「本当にすいません。Aさん。」
何度も何度も謝るってくる夏目君に、
怒りも急激に冷めてしまった。
「もういいよ…」
私はそう言って目隠しを外そうとすると、
ガシッと思いっきり腕を掴まれ、
強めの口調の女性の声が聞こえた。
「ッ、」
「御宿の娘、その目隠しを外すんじゃないよ。
それは私達の安全を確保するものだからね。」
私の目に何やらとても警戒している様子。
「ヒノエッ、」
夏目君の焦ったような声。
「いや、わかった。外さないよ。」
私自身、
少し自分の目には何かあるのかもとそう思っている、
いや目だけではない、
あの箱を壊した日から、
色々と異変を感じるのだ。
彼女の反応は理解できる。
それに目はなくとも、
私の霊力を侮る勿れ、
気配は感じる事が出来るのだから何も問題はない…
と思う…
今はきっと、
妖、合計して四人、
そして人間は夏目君含め一人だろう。
「それで…話したい事って?」
なるべく早めに終わらして欲しいものだ、
茶屋に行く約束をしているのだから。
「御宿の人間なら知ってるだろう?
山神様は今どこに居るのか、
それをあんたに吐いてもらう。」
山神様?よくわからない話だ。
「すまん、知らない。」
「隠そうたって無駄だよ!」
頭をガシッと掴まれるが、
知らないもんは答えようもない。
「いや、ほんと知らないです。」
「ヒノエ、頼むからAさんに
乱暴はやめてくれ。」
「…ッ、チッ、
夏目が言うなら仕方ないね。」
「Aさん、
貴方の家で封印されていた神様なんです。
知っている事であればなんでもいいから
教えてください。」
夏目君の懇願するような声に、
私は記憶の中を探るがそれらしいものがどうしても出てこない。
「いや、本当に知らないんだけど?
山神様?誰それ?
私の家では白狐様って言う神様しか聞いたことないぞ?」
「びゃ、白狐様…。
狐…?そう、それですッ!
ヒノエ、確か、お狐様だったよな?」
「あぁ、夏目。
御宿の娘、
御宿家ではただの狐じゃなくて、
白い狐なんだね?」
「え?まぁ…多分そうですけど?
白狐様だし…?」
「その神様のこと、教えてください!」
「えぇ、教えてって言われても…」
彼らが言う山神様とは白狐様の事なのか?
しかし、
山神様であれ、
白狐様であれ、
私はほとんど何も知らないんだ。
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おぼろん(プロフ) - 豆腐の角さん» コメントありがとうございます!全然気にしないでくださいね。皆さんに見てもらえるだけでも嬉しいので!これからも頑張ります! (2020年11月7日 6時) (レス) id: a49c31890f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の角(プロフ) - 二章目おめでとうございます!初めの一票取れませんでした………。これからも頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年11月6日 22時) (レス) id: d448052499 (このIDを非表示/違反報告)
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