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17.Ki ページ48

Ki side




T「本当は、オレの出産予定日の方が早かったんだ。でも、実際は太輔の母君の方が先に出産の兆候が現れた。生まれたのは、亡き父上に生き写しの男児…なのに、一週間後に生まれたオレも男児だった」


陛下の生母は、先代帝の正室だ。

だけど、藤ヶ谷の母親は正室の異母妹ーー自分より身分の高い正室の異母姉に遠慮した結果だった。


T「太輔の母君は、生まれたばかりの赤子を連れて宮中を去ろうとした。父上はそれを知り、天皇家所縁の寺院に母子を移住させた」


それが、この寂心院ーー

生母が病死する6歳まで、藤ヶ谷が過ごした場所だった。



F「認知は出来ない…そう言われていたが、父上はよくこの寂心院を訪れ、母が亡くなればすぐにオレを内密に宮中に引き取ってくれた」

Ki「それが、襲芳舎…」

F「父上は、ずっとオレの行く末を心配していた。オレの存在は、必ずやこの血筋に目が眩んだ輩の謀叛を引き起こすーー」


藤ヶ谷が、全ての感情を押し殺して生きて来れたのは先代帝からの公には出来ない深い愛情を理解していたからだ。


F「そして、現実となった。きっと今後もまた同じコトが…」

Ki「その時は、俺が何とかしてやるよ」

F「え…」


襲芳舎が、炎に包まれた夜ーー

俺を突き動かしていたのは、陛下じゃない…藤ヶ谷の存在だ。

藤ヶ谷を失うかもしれない現実に俺は底知れぬ恐怖を感じ、自らの命も顧みず…あの炎の中に飛び込んだんだ。



Ki「俺は、お前を失いたくない」

F「北山…」

Ki「苦しい時は、俺にその胸の内を吐き出せ。全部、俺が受け止めてやる」

F「それって…」


初めて藤ヶ谷を見たのは、確か10歳の頃ーー父上に連れられて藤ヶ谷家の邸に行った時だ。

驚くほど見目麗しい年上の少年…だが、その表情は死期を前にした病人のようだった。


Ki「なぁ、お前…何で、そんな暗い顔してんだよっ!」

幼かった俺は、藤ヶ谷の残酷な運命など知る由もなかった。

Ki「そんな綺麗な顔してんのに、死んでるみてぇ…」



F「覚えてたのか」

Ki「当たり前だろ?」


驚いている藤ヶ谷が、俺の心をくすぐる。


Ki「そういえば、何度も助けてもらったお礼してなかったな…藤ヶ谷、何が良い?」

答えは、何となく想像がついた。


F「オレを…名前で呼んで欲しい」

Ki「太輔…他は?」

F「もし、宏光も同じ気持ちなら…」


Ki「まぁ…この状況じゃ、断れねぇよな?」


俺は藤ヶ谷の腕を引き寄せて、そっと唇を重ねたーー。



【冬の章・完】

終章→←16.F & Ki



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設定タグ:藤北 , Kis-My-Ft2 , 歴史   
作品ジャンル:恋愛
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Mayu(プロフ) - sakyoさん» sakyoさん、2度目のコメントありがとうございます☆すごい絶妙なタイミングだったんですね。実は、私も結構そのテの映像をまえあし3人の姿に脳内変換してます。笑 丁度、たった今まで本作のオマケを『Talk Room』で書いていたので、宜しければそちらもお楽しみ下さい。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
sakyo(プロフ) - 完結おめでとうございました!お話がスタートした時にちょうど観た平安貴族そのままの世界を楽しませていただきました。そしてお話が完結するタイミングで今度は宮中儀礼の展示を観てきたところで、展示の儀式を藤北玉に置き換えながらニヤニヤしてしまいました。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: e6f004b7a6 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - ももはさん» ももはさん、ありがとうございました!みっくんにしか靡かない光源氏的なF氏…ラストは、既存シリーズに通じる安定の嫉妬深さでした。先の読めない展開…お楽しみ頂けていたら、嬉しいです☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。次作もご期待下さい☆ (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - himacoさん» himacoさん、ありがとうございます☆やっと終わりましたー!私の作品の世界観を気に入って頂けて、すごく嬉しいです。オマケは、実はTさん目線のサイドストーリーの予定ですが、藤北ラブも前向きに検討させて頂きますね☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - Mayu様、完結おめでとうございます!Fさんの光源氏とても素敵でした。みっくんとだけ、関係を結んでくれるのが理想ですが(><)笑 本当に本当に知らない言葉もあり、とても勉強になりました。さすがMayu様です!先の読めぬ展開に翻弄されていたファンの一人でしたっ☆* (2019年10月28日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mayu | 作成日時:2019年8月11日 16時

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