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13.Ki ページ44

Ki side




室内に踏み込んで、一番最初に目にしたのは陛下の無事な姿だった。


T「ミツ…?」


しかし、俺は一瞬で混乱に陥った。



F「北山っ⁈ お前、何でここに…⁈」

Ki「えっ、と…藤ヶ谷が中に入って行くのが見えて、それで…」

F「この馬鹿…‼」


鬼の形相をした藤ヶ谷だったが、それ以上は何も言わなかった。

だけど、俺の中の混乱は収まらない。


F「いいから、2人共行くぞ!」


グイッ…‼


T「待って!」


陛下は明らかな意思を持って、藤ヶ谷の腕を拒絶する。


T「オレは…ここに残る」

F「ダメだ! そんなの許さない!」

T「嫌だ! 行かない。もう戻りたくない…こんな毎日は、もう嫌だ」

俺たちを見上げる目に涙を溜めた陛下の眼差しは、今にも壊れてしまいそうだった。


T「オレは…最初から、帝になんかなりたくなかった」


Ki「………‼」



T「だから、オレは…太輔に…」

F「何を馬鹿なコトを…」

T「そんなコトない!」

たった今拒絶したはずの藤ヶ谷の腕に縋り付く陛下は、必死だ。


T「太輔には、帝として立つ資質も…何なら、その資格だってオレなんかよりも充分ある」

Ki「でも、藤ヶ谷は…陛下の弟宮で…」

通常、同じ父親を持つ立場なら、実兄を超える皇位継承権を与えられるコトはない。


T「違う。太輔は、正真正銘……オレの兄なんだ」


その瞬間、時が止まった気がした。



そんな…まさか……



Ki「陛下の…願いって、まさか…」


俺は、慌てて衣の胸元から一通の書面を取り出す。

陛下の御前だが、迷わず開封した。


Ki「…やっぱり」


『余の身に万が一の事があれば、次の帝は我が実兄である藤ヶ谷太輔とするーー』


俺の手から、力無く懐紙が床に落ちて行く。


F「何で、こんな物…」

拾い上げた藤ヶ谷が、苦しそうな声を上げる。


T「オレは、子供の頃からずっと逃げ出したかった。政治も権力も嫌いだ…全部、本来太輔が手にするはずの物だった」

F「裕太、それは…」

T「皆、太輔を一目見て息を呑まない者はいない。その姿…亡き父上の生き写しだ。政治の才能だって、太輔の方が格段に優れてる」



ガタンッ…‼


その気配に、俺は気付かなかった。


「…それなら、話が早い」

振り返った俺の視界に映ったのは、藤ヶ谷の義理の叔父に当たる人物ーー

その後ろには、刀を構えた数人の男達が俺たちの前に立ちはだかった。


「太輔、お前が帝位に立つ時が来たんだ。今上帝であられる陛下の遺言を得て、な」

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設定タグ:藤北 , Kis-My-Ft2 , 歴史   
作品ジャンル:恋愛
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Mayu(プロフ) - sakyoさん» sakyoさん、2度目のコメントありがとうございます☆すごい絶妙なタイミングだったんですね。実は、私も結構そのテの映像をまえあし3人の姿に脳内変換してます。笑 丁度、たった今まで本作のオマケを『Talk Room』で書いていたので、宜しければそちらもお楽しみ下さい。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
sakyo(プロフ) - 完結おめでとうございました!お話がスタートした時にちょうど観た平安貴族そのままの世界を楽しませていただきました。そしてお話が完結するタイミングで今度は宮中儀礼の展示を観てきたところで、展示の儀式を藤北玉に置き換えながらニヤニヤしてしまいました。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: e6f004b7a6 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - ももはさん» ももはさん、ありがとうございました!みっくんにしか靡かない光源氏的なF氏…ラストは、既存シリーズに通じる安定の嫉妬深さでした。先の読めない展開…お楽しみ頂けていたら、嬉しいです☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。次作もご期待下さい☆ (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - himacoさん» himacoさん、ありがとうございます☆やっと終わりましたー!私の作品の世界観を気に入って頂けて、すごく嬉しいです。オマケは、実はTさん目線のサイドストーリーの予定ですが、藤北ラブも前向きに検討させて頂きますね☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - Mayu様、完結おめでとうございます!Fさんの光源氏とても素敵でした。みっくんとだけ、関係を結んでくれるのが理想ですが(><)笑 本当に本当に知らない言葉もあり、とても勉強になりました。さすがMayu様です!先の読めぬ展開に翻弄されていたファンの一人でしたっ☆* (2019年10月28日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mayu | 作成日時:2019年8月11日 16時

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