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10.Ki ページ41

Ki side




酉の刻(夕方6時)ーー。


いつものように陛下の夕餉の席で、すぐ側で控えていた俺の心は騒ついたままだった。

女官たちが、陛下の召し上がった御膳を下げるのを手伝っていると背後から呼ばれた。



T「ミツ、こっちに」

Ki「…はい」


昼間、知ってしまったあの話が心に居座り、返事が一拍遅れた。


T「今日のミツは、何だか素っ気ないね。気のせいかな?」

Ki「そんな…」


だけど、陛下を直視出来なかった。



T「ーーミツ、オレに仕えてくれてありがとう」


え…?


思わず顔を上げて直視した陛下の眼差しは、いつも俺が知る春の陽だまりのような柔らかさだ。

そして、昼間の声が甦る。


T「オレのコト、ずっとどう思ってた…?」


あんな弱々しい陛下、俺は知らない。

俺の前でいつも見せる余裕のある陛下とは、まるで別人だった。

だけど…



T「そして、オレの後宮にミツを迎えるコトは出来ない」

Ki「え…」

T「それすると怒る人がいてさ、だからやっぱり止めようと思って…」

自然と脳裏に藤ヶ谷が浮かんだ。


Ki「あの、それは…」

T「違うよ。ミツは何も悪くない。全部、オレが悪いんだ」

陛下は、何かを決断した。

今の陛下と全く同じ双眸をした人物を俺は知っている…あれは、一昨日の藤ヶ谷だ!



T「ミツ、一つ頼みがある」


スッ…


目の前の床に置かれた、一通の封書ーー


陛下が胸元から取り出したそれは、俺の目にとても不吉に映った。


T「オレの身に万が一のコトがあったら、それを必ず公にして欲しい」







…何かが、起ころうとしている。



Y「宏光様」


宮中を後にして、邸に向かう道中…網代車の外から横尾さんの声がした。


Y「今夜は、冷えると思ったら…宏光様、ほら雪ですよ?」

物見の戸を開けて、夜空からチラチラ舞い落ちて来る小さな粉雪を見上げる。


Y「今夜は、宏光様の寝所に普段より多く火桶を準備させましょう」

今夜の俺の寝所の火桶より、胸元にしまい込んだ封書が気になって仕方なかった。


今夜の陛下は、おかしかった。

確かに、俺は侍従職事務官としてお側仕えをしているが、陛下から公的な文書を預かるような立場じゃない。

そんなコトは、陛下だってご存知だ。

しかも…


Ki「横尾さん、あのさ…」


ガタンッ…‼


その時、俺が乗る網代車が急停止した。


Ki「おぃ、何事だっ⁈」

従者「申し訳ありません。ですが…」


Y「宏光様、大変です! 御所の方角から、煙のようなものが…!」

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設定タグ:藤北 , Kis-My-Ft2 , 歴史   
作品ジャンル:恋愛
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Mayu(プロフ) - sakyoさん» sakyoさん、2度目のコメントありがとうございます☆すごい絶妙なタイミングだったんですね。実は、私も結構そのテの映像をまえあし3人の姿に脳内変換してます。笑 丁度、たった今まで本作のオマケを『Talk Room』で書いていたので、宜しければそちらもお楽しみ下さい。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
sakyo(プロフ) - 完結おめでとうございました!お話がスタートした時にちょうど観た平安貴族そのままの世界を楽しませていただきました。そしてお話が完結するタイミングで今度は宮中儀礼の展示を観てきたところで、展示の儀式を藤北玉に置き換えながらニヤニヤしてしまいました。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: e6f004b7a6 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - ももはさん» ももはさん、ありがとうございました!みっくんにしか靡かない光源氏的なF氏…ラストは、既存シリーズに通じる安定の嫉妬深さでした。先の読めない展開…お楽しみ頂けていたら、嬉しいです☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。次作もご期待下さい☆ (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - himacoさん» himacoさん、ありがとうございます☆やっと終わりましたー!私の作品の世界観を気に入って頂けて、すごく嬉しいです。オマケは、実はTさん目線のサイドストーリーの予定ですが、藤北ラブも前向きに検討させて頂きますね☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - Mayu様、完結おめでとうございます!Fさんの光源氏とても素敵でした。みっくんとだけ、関係を結んでくれるのが理想ですが(><)笑 本当に本当に知らない言葉もあり、とても勉強になりました。さすがMayu様です!先の読めぬ展開に翻弄されていたファンの一人でしたっ☆* (2019年10月28日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mayu | 作成日時:2019年8月11日 16時

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