9.Ki & T ページ40
Ki side
Y「確かに、私は以前藤ヶ谷家に仕えておりました。ですが、ご嫡男である太輔様の込み入った事情までは存じ上げません」
昨日、横尾さんはそれ以上語らなかった。
でも、俺には分かった。
込み入った事情を知らない、それは逆を返せば、藤ヶ谷には何か特別な事情があるというコトだ。
T「ねぇ、太輔はオレと兄弟として生まれて…どんな気分だった?」
主君と…臣下、じゃなかった……
2人は……
次の間に忍び込んだ俺は、全身がガタガタ震え出すのを止められなかった。
今までの陛下に対する藤ヶ谷の態度が、走馬灯のように記憶の中で駆け巡る。
Ki「だから…
だけど、まだ分からない。
全ての疑問符が、一つの答えに嵌まった瞬間…更に湧き上がる新たな疑問。
じゃあ、何で…
F「北山から手を引け。そしたら、裕太…オレは、お前の望みを叶えてやる」
隣の奥間で、衣擦れの音がしてスッと誰かが立ち上がる気配がした。
ヤバい…藤ヶ谷が、こっちに来る……‼
俺は弾かれたように立ち上がり、渡殿を一目散に走った。
決して俺なんかが聞いてはいけない重大な機密事項を知ってしまった。
全身に鳥肌が立ったが、構ってられなかった。
ドンッ…‼
Ki「うわっ…!」
突然、行く手を阻まれた俺は勢い良く衝突した拍子に後方に尻餅をついた。
ガタンッ…‼
「大丈夫ですか?」
北山殿、と呼ばれて俺は顔を上げる。
「申し訳ない。お怪我をされていなければいいが…」
Ki「あ、いや…」
藤ヶ谷の叔父に当たる人物だった。
Ki「こちらこそ、前を見ていませんでした。申し訳ありません」
差し出された手を丁寧に断って、俺は立ち上がる。
「北山殿が、
Ki「いや…!」
即座に否定したのは、無意識だった。
Ki「何でもありません。ちょっと急いでて…失礼します」
一礼をして、相手の横をすり抜けて廊下を歩き出す。
俺の全身に広がった鳥肌は、全く治まる様子はなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
T side
清涼殿・奥間ーー。
T「ねぇ、北山は?」
女官「すぐにお呼びします」
T「あ、いいや。それより、墨と筆を…」
女官「畏まりました」
一旦退がる女官の背中を見送り、文机に肘をつきながらオレは自嘲的な笑みを浮かべる。
やっと、ここまで来た。
これで、もうすぐ…オレの願いが叶う。
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Mayu(プロフ) - sakyoさん» sakyoさん、2度目のコメントありがとうございます☆すごい絶妙なタイミングだったんですね。実は、私も結構そのテの映像をまえあし3人の姿に脳内変換してます。笑 丁度、たった今まで本作のオマケを『Talk Room』で書いていたので、宜しければそちらもお楽しみ下さい。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
sakyo(プロフ) - 完結おめでとうございました!お話がスタートした時にちょうど観た平安貴族そのままの世界を楽しませていただきました。そしてお話が完結するタイミングで今度は宮中儀礼の展示を観てきたところで、展示の儀式を藤北玉に置き換えながらニヤニヤしてしまいました。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: e6f004b7a6 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - ももはさん» ももはさん、ありがとうございました!みっくんにしか靡かない光源氏的なF氏…ラストは、既存シリーズに通じる安定の嫉妬深さでした。先の読めない展開…お楽しみ頂けていたら、嬉しいです☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。次作もご期待下さい☆ (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - himacoさん» himacoさん、ありがとうございます☆やっと終わりましたー!私の作品の世界観を気に入って頂けて、すごく嬉しいです。オマケは、実はTさん目線のサイドストーリーの予定ですが、藤北ラブも前向きに検討させて頂きますね☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - Mayu様、完結おめでとうございます!Fさんの光源氏とても素敵でした。みっくんとだけ、関係を結んでくれるのが理想ですが(><)笑 本当に本当に知らない言葉もあり、とても勉強になりました。さすがMayu様です!先の読めぬ展開に翻弄されていたファンの一人でしたっ☆* (2019年10月28日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mayu | 作成日時:2019年8月11日 16時