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残ったおかずとご飯を綺麗につめて彼に渡す。
「お代は『いつもの定食』の分でいいですよ」と親切のつもりで言うと、彼は少しだけ不機嫌そうなオーラを出して「ん？」と言った。
「だから、定食代だけいただきますねって」
「や、けど……」
「いいんです、
サービスって言ったでしょう？」
「…………」
「それにしても日曜の夕方に
仕事に呼び出されるなんて大変ですね」
「お客さん、どんなお仕事されてるんですか？」
なんて、また余計なことを聞いてしまう。
おじいちゃんには、Aは口から生まれたから、接客させるにはちょうどいいなんて言われたこともあるけれど。
だって、仕事って聞いて少し驚いた。
てっきり学生で、同い年くらいか、私のほうがヌナかもと思っていたくらいだから。
心の中で言い訳を並べていると「は？」と素っ頓狂な顔をして、彼が呟く。
「……知ってて話しかけてくるのかと思った」
「……？ 何をですか？」
「や、何でも」
「…………？」
「……これ、『定食代』」
ごちそうさま、と彼は席を立って、出口へ向かう。手ぶらだった彼の左手には、袋に入った残りもののお弁当がぶら下がっている。
カラカラと音のする引き戸を開ける彼の後ろを見送ろうとついて行く。
空はもう紺色に染まっていて、所々に光る星が散りばめられていた。
「ありがとうございました
…………また来てください」
後ろ姿を見たら、何となくもう来てくれないような気がして、慌てて「おじいちゃん、喜ぶから！」なんて付け足す。
賑やかに食事をするのが好きだ。
美味しいものを食べて、色んな話をして、それだけで大体のことはうまくいく。そう思う。
だけど静かな食事も悪くないし、そういうのが好きな人だっているって、知ってる。
だから話しかけすぎたかもって、少しだけ後悔した。
「あ……えっと、
気が向いたらでいいので、ぜひ」
「……言われなくてもいつも来てる」
「え？」
「アンタ居たの初めて見たけど」
「あ……私、土日と、
平日の夜たまにしかいないから」
「…………ふぅん」
「そか」と興味なさそうに返事をして、彼は歩き始める。
また、来てくれるということだろうか。
私がいる時だったらいいのに、なんて思うけれど、彼にとってそれは良くないのかもしれない。
彼の左手からぶら下がって揺れるお弁当には、さっき出したのとは違うおかずもさらに加えた。
それに彼が気がつくのは、いつ頃なんだろう。
「時限爆弾みたい」
私がそう呟いたところで、大通りの方に曲がった彼の背中は見えなくなった。
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svt11117(プロフ) - ほんとにすごく今更だけど、何故か急にこのお話のこと思い出して無性に読みたくなっちゃって漁りまくって読み返しちゃいました！初めて読んだ時と変わらずとても面白くて一瞬で読んじゃいました笑笑 自粛期間の私の唯一の楽しみでした、ありがとうございました､!! (2023年3月10日 20時) (
レス) @page30 id: 45166a94c7 (このIDを非表示/違反報告)
my(プロフ) - あやまろさん» コメントありがとうございます。書きながらちゃんと面白いのだろうかと思っていたので、そう言って頂けてうれしいです。引き続きよろしくお願いします！ (2020年11月8日 22時) (レス) id: 34a0877eba (このIDを非表示/違反報告)
あやまろ(プロフ) - 初コメさせていただきます！今1番更新が楽しみな作品で更新される度ニヤニヤして読んでます笑 そして何よりお忙しい中更新してくださってありがとうございます！ (2020年11月8日 17時) (レス) id: 74f0e4a445 (このIDを非表示/違反報告)
my(プロフ) - ★たくさんお気に入りしてくださってありがとうございます！このお話は年内に完結するようにがんばりたいと思います。また別のお話や短いお話も書きたいなと思っています！ (2020年11月5日 19時) (レス) id: 34a0877eba (このIDを非表示/違反報告)
mayu(プロフ) - めぐさん» お返事遅くなってすみません！コメントありがとうございました……！まただいぶ間隔があいてしまいましたが少しずつ進めていけたらと思っています。これからもよければお付き合いください！ (2020年10月17日 4時) (レス) id: 34a0877eba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：my | 作成日時：2020年2月16日 0時
