一緒にごはん

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驚くような勢いで料理を吸引した彼は、箸を置いて満たされたように椅子の背もたれに寄り掛かっている。
グラスには炭酸の抜けたコーラが、あと僅か数センチを残すのみだ。

満たされた彼は食べる前のふにゃふにゃな姿に戻ったみたいで、しょぼしょぼした目で瞬きを繰り返している。
お腹がいっぱいになったら、眠くなるよね。
とってもよく、気持ちはわかるけれど。



「……お腹いっぱいになりました？」

「おー……おん」

「あはは、よかったです
眠くなっちゃいました？」

「んー……」



私の言葉がちゃんと聞こえているのか、いないのか。また返事が曖昧になってきた彼は、今にも船を漕ぎ出してしまいそう。
出来るならずっとその姿を見つめていたいけれど、そんな硬い椅子で夢の世界に旅立つなんて、だめだ。
もっとふかふかで、暖かくて優しい場所で、眠らなきゃ。


「ここで寝るより、
ちゃんとお家のベッドで寝てください」

「……わかってる」

「歩いて帰れます？
タクシー呼びますか？」

「いいよ
まだ食べてるだろ、孫」

「えっ」



どうやら私が食べ終わるのを、待ってくれているらしい。
びっくりして、つい「私なら大丈夫です！」と声をあげてみるけど、シッシッと手を払うようにして、私に食べ進めるようにと促す。

それならば早く食べ終わろうと、慌ててラーメンをかき込めば、案の定むせてしまう。目の前の席からは、フンと鼻で笑う声がして、呆れたような視線を向けられる。



「……別に急がなくていいけど」

「だって！ 今日、この後
お仕事じゃないんですか」

「今日は帰って寝る」

「そ、そうなんですか……！」

「なんでお前が嬉しそうなんだよ」


呆れたような顔をして、彼が言う。
だって、嬉しい。
一緒にごはんを食べて、今日は何にも予定が無くて、後は好きなだけ眠れるなんて。最高の週末だ。


「すっごく、幸せだなと思って」


こんな幸せな日が、毎日だったらいいのに。
そんなこと、有り得ないけれど。

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