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「えっと、じゃあここで」
曲がり角で別れを告げようとすれば、「は？」と彼は顔を顰める。何か変な事を言っただろうか。
確かいつも、この道を真っ直ぐに帰っていくのに。
「帰り道、あっちじゃなかったですか？
いつもお店を出たら……」
「…………」
「ち、違いましたっけ……？」
「……はぁ」
彼はまた盛大にため息を吐く。
それから「先週この近くでなんか事件あったらしいぞ」と言って、ずんずんと私の曲がる方へと進んで行ってしまう。
ーーえ、それって。
びっくりした私がつい「もしかして、送ってくれたんですか！？」と声を上げれば、彼は「声でかいんだよ」と振り返ってこちらを睨んだ。
「な、なんかすみません……」
「そう思うならさっさと家入れ。
てかこんな時間に出歩くな」
「だって、気分転換したくて。
身体が糖分を欲してたんですもん……」
「じゃあ明るいうちにコンビニ行っとけよ」と彼が正論を言うので、何も答えられなくなってしまう。
うっ、と言葉を詰まらせる私を見て、彼はフンと勝ち誇ったように笑っている。
「で、いつ試験終わんの」
「一応、今週までです」
「へぇ」
自分から聞いたくせに、やっぱり淡白な返事を寄越す。まあ、私のことなんてそれほど興味無いか。
少しのがっかりと、安心感を抱きながら歩き進めれば、もう本当に家の前に来てしまった。
コンビニがもう少しだけ遠ければよかった、そう思ったのはこれが初めてだ。
「……送ってくれて、
ありがとうございました」
私がぺこりと頭を下げると、彼は「ん」とだけ答えて、その場に佇んでいる。私も彼を見送ろうとしたけれど、彼もどうやら、私が家に入るのを見届けるつもりのようだ。
「じゃあ、失礼しますね」
ここは私が折れるべきだろうと、踵を返してドアを開ける。今振り返ったら、彼はどんな顔をしているだろう。
そんな風に思っていると「おい」と彼の声がして、振り返ればコーラが一本、緩い曲線を描いて飛んでくる。私は慌ててそれをキャッチして、彼を見る。
「あとちょっと、頑張れよ」
マスクとキャップの間の目が、笑ったように見えて、息が止まるかと思った。
そんなの、ずるいよ。
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svt11117(プロフ) - ほんとにすごく今更だけど、何故か急にこのお話のこと思い出して無性に読みたくなっちゃって漁りまくって読み返しちゃいました！初めて読んだ時と変わらずとても面白くて一瞬で読んじゃいました笑笑 自粛期間の私の唯一の楽しみでした、ありがとうございました､!! (2023年3月10日 20時) (
レス) @page30 id: 45166a94c7 (このIDを非表示/違反報告)
my(プロフ) - あやまろさん» コメントありがとうございます。書きながらちゃんと面白いのだろうかと思っていたので、そう言って頂けてうれしいです。引き続きよろしくお願いします！ (2020年11月8日 22時) (レス) id: 34a0877eba (このIDを非表示/違反報告)
あやまろ(プロフ) - 初コメさせていただきます！今1番更新が楽しみな作品で更新される度ニヤニヤして読んでます笑 そして何よりお忙しい中更新してくださってありがとうございます！ (2020年11月8日 17時) (レス) id: 74f0e4a445 (このIDを非表示/違反報告)
my(プロフ) - ★たくさんお気に入りしてくださってありがとうございます！このお話は年内に完結するようにがんばりたいと思います。また別のお話や短いお話も書きたいなと思っています！ (2020年11月5日 19時) (レス) id: 34a0877eba (このIDを非表示/違反報告)
mayu(プロフ) - めぐさん» お返事遅くなってすみません！コメントありがとうございました……！まただいぶ間隔があいてしまいましたが少しずつ進めていけたらと思っています。これからもよければお付き合いください！ (2020年10月17日 4時) (レス) id: 34a0877eba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：my | 作成日時：2020年2月16日 0時
