終天に巡り逢うⅣ (ページ46)

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番外編１２ページ46

歌うように、彼女は形の良い唇から僕の名前を口にした。

「うーん、君は一体何者なんだろう」

『ただの異物だよ。物語の中には入れない、ゴミだ』

「…ふぅん」

読めない。何を考えているのか。何がしたいのか。
…殺しておくべきか否か迷うなぁ、これ。
ただ真っ直ぐに、愚かなほど真っ直ぐな瞳なのに、孤独さを感じる。
ああ、そういえば、この子は家の者とは不仲だったか。特に、僕の大事な運命の子とは。

「君はなぜ戦うんだい？疎まれているくせに」

『…』

初めて顔色を変えた。こういうところはまだ子供だな。感情を隠しきれてない。いくら、天才と言われていても…所詮七歳の子供であることに変わりはない。
少し俯き、目元に影が出る。

『…それしか、生きる理由がないから』

ぽつり、と彼女は零した。

『疎まれてていい。嫌われててもいい。私にはそれしかできないから…』

諦めたようなそれ。たった七歳の子供が言うようなことでも、する表情でもない。

「…」

『本当はいないはずだったのに、私は産まれてきてしまったから』

「だから、家族のために血に塗れる？」

『自分のためだよ』

自嘲めいた笑みと共につぶやく。

『自分のために、誰かを殺すと決めた。自分の生きる理由にするために、誰かの命を奪うと決めたんだ』

ああ、本当に子供らしくない子だ。
いくら環境が環境とはいえ、ここまでになるだろうか。

『どんなに頑張っても、私はこの計画の中には入れない。いや、入りたくない。壊したくない。だって、もしそんなことをしてしまったら、私はアイツが望んだことをしてしまうことになるから』

「アイツって？」

『神、かな』

それはいったいどれを指すのだろうか。

「君は、いったい何者だ？」

『…。…私は、』

「…」

『世界から切り離されたモノだよ』

諦めたように、寂しそうに、彼女は儚げに微笑んだ。

「…切り離されたモノ、ね」

『うん』

「ふぅん…そう」

藤色の瞳が僕を恐れることなく見つめる。
なんだろうか。この眼差しに、惹かれている自分がいる。
愚かで、弱くて、脆い、この存在に興味がある。

殺すのは、惜しいな。

「よし。君は生かそう」

『なんで？』

「んー。可愛いからかな」

何か思い出したように気持ち悪そうな顔をされる。

『…そういえばロリコンだったな、コイツ』

「待って。違うからね？」

『気持ちわる…触らないでよ』

と、本気で汚らわしいモノを見るような顔をされてしまった。