終天に巡り逢うⅣ (ページ41)

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番外編７ページ41

Aは困惑したような表情を浮かべて、それから笑う。

『…ちょっとずつで』

「…仕方がないな」

その方が彼女がパンクしなさそうだ。
あまり強く出過ぎてAが戸惑い、引いてしまっては意味がないしな。

『…ウルド様、』

「別に怒ってもないし呆れてもない」

そう言えば、ホッとしたような表情を浮かべるA。

「おまえの性格は承知している。別に責めてないし、時間は無限にあるんだ。焦る必要もさほどない」

『さほど』

「場合によるということだ」

『うへぇ』

「文句でも？」

『まさかぁ』

完全に脱力してAは俺に身を預け、じっと見上げてくる。

『…』

「なんだ」

『キラキラしてるなと』

「は」

『綺麗ですね。触ってもいいですか？』

「ああ」

是と答えれば、Aは恐る恐るといった動きで俺の髪に手を伸ばす。そして、触れる。

『うわ。さらさら。柔らかい』

「…」

『キューティクルえっぐ。天使の輪っかが…女子以上に…』

「…」

好きに触らせながら屋敷に戻る。
部屋に入るとソファーにAを降ろした。

『ありがとうございます』

「少し待ってろ」

『？』

奥の部屋に行き、目的の物を抽斗から取り出す。

『…？』

それを手に、Aの隣に腰掛けた。
不思議そうな表情で俺を見上げる彼女にその箱を差し出し、開けた。

『！』

息を呑んだAはゆっくりと瞬きをし、くしゃりと顔を歪めた。

『これ、』

「回収して修理させた」

それは、俺がAに渡した髪留めのリメイク版だ。前と少しデザインを変えさせた。
彼女の震えた指先がそれを確かめるように触れて、撫でる。

「つけるか？」

『っはい』

「後ろを向け。つけてやる」

素直に後ろを向いたAの髪を掬い取り、ハーフアップに纏めていく。柔らかくて、少しウェーブがかった黒髪は毛先が白いままだった。あの日、瑚月の力を使ってから戻ることはなかった。伸びた分は黒髪だが。
ぱちん、と音を立てて金具を留める。
金色の透かし彫りに紅い宝石が散りばめられたそれは、彼女の黒髪によく映える。

『、ありがとうございますウルド様』

はにかんだAがこちらを向く。

『壊されてしまって、とても悔しかったし悲しかったんです。…初めて、誰かに貰ったものだったから…だからこうしてこれを、また身に付けられて嬉しいです』

本当に嬉しそうに、幸せそうにAは笑う。
それを見て、自分の胸の奥が柔く疼いたのを感じた。